2000年7月30日日曜日

村治佳織@大阪シンフォニーホール

 さてさて、数日日記の更新が滞ってしまい申し訳ありませんでした。日付けはもう30日(しかももう半分は終わっている)のですが、29日付で村治佳織のコンサートレビューを書かせていただきたいと思います。いや、今日は例によって月光堂コンサートがあって、夜は多分30日付でそのことを書くと思うので29日付で。うおおぉ、っていうか『エチュード第六番』はマジで結構ヤバイんですが!? まぁ村治さんのを参考にしたら多少は曲になってきたが・・・。さてどうなることやら。

 で、コンサートレビューですが、まず当日のプログラムは以下の通り

 コンサートは木村大も『カデンツァ17』の中で弾いているヴィラ=ロボスの『カデンツァ』から入ったわけですが、村治さんの『カデンツァ』は早い!あの木村大も真っ青なくらいのスピードで恐ろしく超速で弾き切っていました。ある意味かなり恐かったです。で、私も今日弾く(泣)『エチュ-ド第6番』ですが、これは私自身弾いているということもあり凄く参考になりました。この前木村大が弾いていたのと比べるとスピードは随分ゆっくりですが、曲調の強弱の付け方やフレ-ズの終わりから次のフレ-ズに入るまでの微妙なタイミングなどはまさに絶妙の一言。音がピ-クまで上がっていって折り返してから音程は下がりつつ音量はクレッシェンドで上がっていくところなんて、あの和音の嵐の音が切れやすいフレーズが実に綺麗に響いていて、聴いているとその音に自分が吸い込まれて落ちていくような感覚すら覚えました。あれはさすがとしか言いようがありません。聴かせ方が異常にうまかったです。次は正直たいして印象に残ってないのですが(爆)、まぁそれは私がこの曲をあまり好きでないからでしょう。あるいは『エチュ-ド第6番』の印象に私が浸っていたせいでしょう。そして次のソルの『幻想曲』がまたムチャクチャよかったのです。私は往々にしてソルやジュリアーニといった古典期の曲に感動を覚えることはあまりないのですが、これは本気で感動しました。村治さん特有のクリアかつシャープで繊細、やや玲瓏な感じもするが情感溢れる音色が見事にこの曲にマッチし、彼女の最大の才能である(と私が思っている)曲の聴かせ方のうまさが際立って実に素晴らしい演奏を聴かせていただきました。感動です。古典期の曲を人が弾いてるのを聴いていいなと思ったのはピエッリが弾いた『ロッシニアーナ第1番』以来でしょう。しかし古典期の曲ってこの『幻想曲』にしても『ロッシニアーナ第1番』にしても、なんだかやたらと長いのが自分で弾こうという気力を萎えさせてくれますよね(『幻想曲』約12分、『ロッシニア-ナ第1番』約18分)。そして次の『ソナタ』ではまだ曲の楽章の途中であるにも関わらず(確か第2楽章が終わったところ)客が何を勘違いしたかいきなり拍手をしてしまい、村治さんが「いや、ここは違う」と言いたげに右手でさりげなく制止を促すという場面が・・・。しかも大部分の客はその彼女の仕種にも気付かず拍手続けてるし。思わず休憩時間に私は「大阪は田舎者の集まりかい!?」とグチをこぼしてしまいました。

 で、第2部では何と言っても『祈りと踊り』でしょう。彼女のロドリーゴはひと味違う!この曲を弾いてる時の彼女からは物凄いオーラが出ていました。大きなダイナミクスとアクセントを曲の流れの中で見事に引き分けて聴かせ、凄まじい緊張感と集中力が聴いてる方にまで伝わってくるような、ある意味鬼気迫る熱演。この日ソルの『幻想曲』と並んで私の心を奪ってくれた演奏でした。しかしロドリーゴはやっぱり難しい・・・。私には弾けません。『タンゴ・アン・スカイ』は前半ちょっと調子悪そうで、早いパッセージをしくったりもしていましたが、後半戦はリズムを取り戻し彼女らしい静かに熱く美しい『タンゴ・アン・スカイ』を聴かせてくれました。で、本編最後はピアソラの『天使の死』なわけですが、これがちょいとね・・・。う~ん、ベースの流れがもっと欲しい所で低音が弱かったり、ラスゲアードが忌無の表現を借りるなら「弦に指が負けているような」ちょっと力がないというか勢いのないものだったりで、期待していたほどの演奏は・・・。好きな曲なんですけどね、この曲。アンコールの『サンバースト』も恐ろしくミス多かったですしね。あれだけミスしながらも曲の流れが絶対止まらないところに感心したくらいです。練習不足、・・・なのでしょうか?しかしアンコ-ル最後の『小麦畑にて』はまた素晴らしい演奏でした。やはり彼女はロドリーゴの曲になると何かが違います。そしてこの曲で前2曲の分の機嫌をすっかり直した私は、溢れる感動のもと隣で観ていた98年度F技殿と彼女のサインをいち早くもらうためにサイン会会場に向けてダッシュをかけたのでした。

 しかし村治さんはやはり曲の聴かせ方がとてもうまいです。今回のコンサ-トでは特にロドリ-ゴ2曲とソルの『幻想曲』ですが、他の曲を聴いていてもちょっとしたところに物凄い神経が使われているのがわかる。改めて曲を作る、曲を聴かせることの難しさを再認識したコンサートでした。

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