2002年6月1日土曜日

古びないシェイクスピア

 最近、なにげにシェイクスピアにはまっています。何故今更シェイクスピア!? といった感はありますが、実はこれまで読んだことなかったのですよね。いや、前々から読みたいとは思っていたのですが。で、手始めにまず個人的に一番気になっていた『マクベス』を買って読んでみたのですが(敢えて『ハムレット』や『ロミオとジュリエット』ではない)、これに見事にやられました。

 まぁシェイクスピアに関しては、ご存じの通り訳が新旧色々出ていまして、どれを選ぶかがまた難しいところなのですが、私がかったちくま文庫のものは訳が新しく(確か『マクベス』は1995年)、言葉にそれほど違和感がないのと、随所随所でページ下に原文や注釈が出ていて訳の意図や原語のリズムなどがわかるのがよろしかったですね。シェイクスピアの語彙や言葉のリズムは、端的にいうなら非常に美しいのです。そしてシェイクスピアはもともとが劇ということもあり、大半は台詞構成のみで進んでいくのですが、まぁあの時代らしいといえばあの時代らしいえらい大仰な言い回しの中に隠れる綺麗な陰や同音異義語の使い回しや、そして何よりも飾り立てられた言葉の裏に隠れた人間の本質に対する鋭い洞察が、練りに練られた描写や小手先の技法が霞んで見える深遠さを味あわせてくれるのです。どこかでこんな記事を読みました。「バッハの中には音楽の全てが凝縮されているとよく言われるが、それと同様にシェイクスピアの中には文学の全てが凝縮されている」。なるほどなぁと納得してしまいました。1500年代後半から1600年代の間に、音楽と文学は既に極められてしまっていたのかもしれません。そして同時に、人間が抱える本質的な問題というのは、結局数百年前と何ら変わってはいないのだなとも思いました。だからこそ、当時の風刺も含め、人間の本質を突いたシェイクスピアの言葉は今でも説得力をもって受け止められるのであり、だからこそバッハの音楽は未だに人の心を引き付けるのだなと。人間は、結局本質的なところでは進歩も何もしていないのかもしれません。

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