2003年5月15日木曜日

遠い言葉

 遠い昔、遥か昔のこと。俺がまだ新潟にいた頃。受話器の向こう側から聞こえてくる、何でもないような一言がわからなかった。一回ではなく、何度も。面と向かって会っている時は決して言わなかったけれど、電話で話す時にはいつの頃からか、切る間際によく聞くようになった言葉。今にして思えば、もしかしたらあの言葉がターニングポイントだったのかもしれない。あの頃の俺は、その言葉にどう応えていいのかわからなかった。そして、それは今でもわからない。どんな気持ちだったのだろう。何を望んでいたのだろう。暮れ行く夏とともに、川の向こうに沈んでいく侘びしげな夕陽のように消えていった言葉達。一つの確約もないまま、季節だけが変わっていった。

「私に何かできることがあったら言ってね」

 何の前触れもなく蘇った、遠い過去に埋もれた記憶。あの川の堤防から、今年の夏もあの頃と変わらない花火が見えるのだろうか・・・。

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