2004年11月4日木曜日

二度と行けない店

 個人的にはほとんどボーナスと考えても差し支えない週の中日の突然の休日。天気もいいし用事もあったので、日吉の街をふらふらと色々歩いて店を回っていた。すると、まだ行きつけというには気が早いかもしれないが、行く度にマスターと一時間も話し込んでいた馴染みのお茶屋さんが、いつの間にかなくなっていることに気がついた。

 何度かこの日記でも触れた、本人曰く珈琲屋なんだけど店構えは紅茶の専門店っぽく、でも一番の売れ線はハーブティーという変な店。マスター馴染みのお客さんがよくたむろしていて、マスターと話しているといつの間にかその場にいる他のお客さん達とも話すようになって、なんとなくその場で人と人のつながりができてしまう、今時珍しい空気の店。いつも豊富な話題と無農薬のコーヒーで迎えてくれて、買い物に立ち寄っただけなのに一時間も過ごしたりしていた、そんな店。最後に行ったのは数週間前。無農薬有機栽培の紅茶と、キャッツクローというハーブというか健康茶を購入して、病院勤務の夜勤明けだというおばさんとマスターと三人で「住むならどこがいいか」というような話をしていた。きっとその時にはもう店じまいは決まっていたのだろう。割引券をくれたマスターの表情は、今思えば少し寂しそうだったような気もする。それは記憶の捏造だろうか?数日前、22時くらいに帰宅途中に店の前を通った時、珍しくその時間に電気がついていて、中でマスターとバイトの女の子がせっせと商品を整理していたのを目にした。車に荷物も積んでるようだったから、「もしかして」というのは少し頭をよぎった。「ちょっと声をかけてみようかな」と思ったけれど、忙しそうだし、月末だったからきっと棚卸しのついでに大掃除でもしてるんだろうと片付けてしまった。

 まだ行くようになってたった半年しか経ってないけれど、寂しいなと思う。初めて行ったときからずっと温かいコーヒーと面白い話を聞かせてくれたマスターに、挨拶くらいはしたかったなと思う。片付けをしている夜に、せめて一言声をかけていれば。後悔は先に立たない。もう、どうしようもないこともある。マスターはこれからどうするんだろう?店は引っ越すだけなのか、それとももう完全にやめてしまうのか。もう内装もすっかりはがされて、白い壁が四方にまぶしく光るがらんどうの店舗スペースが、なんだか妙に無機質に見えた。次は、花屋が入るらしい。街は変わっていく。その中で生活する人も変わっていく。おしなべて、すべては変わっていく。それが希望も生むし、寂しさも連れてくる。それが出会いを作り、別れをも押し付ける。

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