2005年8月29日月曜日

EXPO 2005『愛・地球博』- リニモ/ブルーホール/マンモスラボ

 というわけで去る8月26日、台風が関東を通過するのとちょうど入れ違うような絶妙なタイミングで新幹線に乗り、もはや行き慣れてしまった感のある名古屋駅を経て、行ってまいりましたEXPO 2005『愛・地球博』。いつも客先に行く際は大曽根で乗り換えるエキスポシャトルにそのまま乗り続け万博八草へ、そして世界初のリニアモーターカー『リニモ』へ。リニモ、はっきり言って混み過ぎててよくわかりません(泣)。4月の月曜朝八時台の東横線ばりのすし詰め満員電車じゃあ、「おー、リニアモーターカーだ」等と感慨に浸る余裕などあろうはずもありません。正直ゆりかもめや、関西の方ならポートライナーと大差ありません。ともあれそんな大混雑のリニモに揺られ、どうにかこうにか長久手会場に辿り着きました。そしていよいよいざ万博へ。

 まず行ったのはグローバル・ハウス。「マンモスが見たい」という連れのリクエストで、事前予約まで取って10:40スタートの回に入って、ソニーの最新レーザー・プロジェクション・システムが体験できるというブルーホール経由でマンモスラボへと回っていきました。とりあえず幅50m高さ10mの超巨大ディスプレイ、凄かったですねー。映画館のスクリーンを横に3つ4つつなげて、しかもプラズマディスプレイのような鮮明さ。あれでグランドキャニオンやらジャングルやらエアーズロックやらナイアガラをビュンビュン小型飛行機で飛び回ってるような映像を立て続けに見せらるので、下手すりゃ酔ってしまいそうな勢いでした。それ程までに鮮明なのです。だけど同時に思ったのは、たとえ幅50mものディスプレイでもその真ん中近辺に座っていた私の左右の視野すべてを映像で覆い尽くす程の領域ではなかったせいか、その光の原色を直接ディスプレイに映すという超鮮明な画像であってもやはり、それは目には映像としか認識されないのだなということ。木の葉を透き通ってくる太陽の日差しや、冷たく青くそびえる北極の氷とそれを移す極冷の海面、それらは単体で見ればなるほど現実と見紛わんばかりの鮮明で美しい映像で、その並外れた奥行きの表現力も含めてとてもそれが映像とは思えない程鮮明なのですが、でもやはりそれは映像としてしか認知されないのです。やはり360度の現実感を作らないことには人間の感覚というのはごまかされないものなのでしょうか。それならやっぱり外の世界にそういった環境を作るよりは、脳を直接いじった方が早いですね。そんなことを思いながら見ていました。

 そのディスプレイのデモンストレーションとして流される映像は、先程述べたような世界各地の絶景を飛び回っていくものと、世界の色々な数字を色々な角度から見てみるというものですが、その中でちょっと気になることがありました。それは以下のようなメッセージです。現在地球上で生産されている食料の量を(何tだったか忘れましたが)表示した後で、それはこう述べました。

「食料不足が心配です。でも、大丈夫です。今世界で生産されている○tで、全世界の人が食べていくには充分です。それを公平に分配できない輸送システム等が問題なのです」

 なかなか意外でした。食料不足食料不足と言われていますが、実は今ある食料を公平に分配できれば、既に全人類が食べていくには充分な量が生産できている。これはある意味新たな問題提起です。これからも(日本はともかく)世界的には続くであろう人口増加で問題になることが予想されている食料危機に対する解決策として、単純な食料増産ではなく、公平な分配システムという改善案が出てくることになります。まぁ、ある意味社会主義的な話ですがここではそういったイズムがどうこうといった話は置いておいて、単純になるほどなと思いました。そういった見方もある、ということです。

 ただ、同時に気になったのは、今現在では仮に公平に分配すれば全人類が食べていけるだけの食料が生産されているとして、果たしてそれは今後もずっとそうなのかという問題です。単純に食料の生産量が今のまま変わらなければ、人口の増加が続けばいつかは増加分が食料供給料を超えてしまうだろうし、それ以上にこれから先農作物や魚介類の生産量は減少していくことでしょう。あまり表立って問題視されてはいませんが、インドやアメリカの穀倉地帯と呼ばれているところでは農業用に大量に汲み上げたせいで地下水が枯渇し、もう農業が続けられなくなった土地やもうあと何十年でダメになる土地が増えてきています。地下水が溜まる数千年から数万年のペースに比べて、人が農業に水を使用するペースはあまりに早すぎるのです。そうでなくても資本主義市場から見たらお世辞にも経済効率がいいとは言えないのが農業です。産業の近代化が進めば、第一次産業に従事する人は減っていきます。食料の作り手が少なくなっていったのでは量を維持できるはずもありません。漁業にしてもそうです。海洋汚染や温暖化等による気象の変化で、近年魚介類の水揚げ量も減ってきています。それはおそらく今後も加速するでしょう。養殖でどこまでまかなえるのか。正直よくわかりません。現状では公平な分配システムとやらが存在しさえすれば食料は何とか足りるのかもしれませんが、将来はどうなのでしょうか。ちょっと、考えてみたりもしました。結局、食料問題が"大丈夫"ってことはなさそうです。

 そしてマンモスです。ロシアの永久凍土の中から出土したという「ユカギルマンモス」。その皮膚のしわや毛までが残っているという保存状態の良さから、見る者になかなか想像力を働かせてくれます。上下二段に分かれている動く歩道に乗って眺めるユカギルマンモスの頭部は思っていたよりも小さくて、高さはせいぜい私の上半身くらい。けれどやはり皮膚や毛が残っている生々しさは、ちょっと感慨深いものがありました。コイツは一体一万年前にどういう風に生きていたのだろう。コイツはマンモスが絶滅した時にはまだ生きていたんだろうか。もしそうでなければ、開かれることのない永久凍土の中から、仲間達が滅んでいくのを一体どのような気持ちで眺めていたのだろうか。そんな歴史的なロマンシズムを感じてしまいます。動く歩道に流されて、マンモスを目にできる時間はせいぜい数分と短いのですし、正直想像していたような迫力のある代物ではないですが、時を超えてきたその姿には、何かしら想像力を刺激するものがあります。

 そしてその後はグローバル・コモン6へ渡り、シンガポール館のレストランで昼食を取った後に南太平洋共同館で白いハゼを見てテンション上げたり、オーストラリア館で巨大なカモノハシの模型をバックに写真を撮ってみたり、東南アジア系のパビリオンを適当に回りながら14時くらいまでを過ごしました。基本的には15分以上並びそうなところは敬遠し、そんなに並ばずともすぐ入れるところを見て回るというスタイルです。そんなに無理して120分待ちとかしてまでトヨタやヒタチのパビリオンを観なくても、万博というところは割に結構楽しめます。そして14時を回った辺りで今度は私が行きたいと言っていたアルゼンチン館とアンデス共同館を見に行くためグローバル・ループに出ます。自転車タクシーに乗ってグローバル・コモン1まで行き、そこから歩いてグローバル・コモン2へ。さぁ、アルゼンチンとアンデスです。もちろん目的はアルゼンチン・タンゴとフォルクローレです。ところが、その目的を果たす前に、実に意外なイベントが待ち構えていました。

続く(次は意外なイベント/アルゼンチン館/アンデス共同館の予定です)

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