2006年3月26日日曜日

消えていく思い出達 - 神戸ポートピアランド

 神戸にある遊園地、『神戸ポートピアランド』が今月一杯、31日をもって閉鎖になるというニュースを聞いた。神戸の海に浮かぶ人工島都市ポートアイランドにあるこの遊園地に初めて行ったのは、高校の修学旅行の時だった。神戸では一日自由行動、宿泊は京都なので各自神戸から京都に移動して京都で集合というある意味リベラルな修学旅行。とはいえ修学旅行という建前上、規律的にはポートピアランドのような遊園地に行くことは許されないわけだが、そこは体育祭をばっくれてもばっくれたことがばれないくらい用意周到な我らのグループ。学校から支給された『写ルンです』には午前中に行った異人館での写真をひたすら詰め込み、ポートピアランドでの写真はプライベートのカメラに集中させるという計画的な行動で無事に遊園地で遊ぶ午後を手に入れることに成功した。

 ポートピアランドは楽しかった。当時組んでいたバンドのメンバーと神聖皇帝らで構成されていたウチらの班(本来同じ組でのみ構成されるはずの班だが、ウチらには「同じ組のヤツといてもつまらん」と言って抜けてきた他の組のバンドメンバーもいた。そして驚くくらい女っけの無かったウチらのグループは、当然のように男だけで構成されていた)は、とにかく絶叫系のアトラクションを中心に神戸の遊園地を堪能しきった。絶叫系のアトラクションにリピートも含めて10回以上乗った結果、京都に向かい疲れ切った電車の中では目を閉じると空間が加速する感覚が蘇るくらいにまで感覚が研ぎすまされ、「あー、目を閉じると今でもジェットコースターに乗ってるみたいだよ」とか言いながら京都へ向かっていたのを覚えている。

 特にお気に入りで思い出深いアトラクションは『リバーボート』と『フライング・カーペット』、そして何と言っても『スーパー・ループ・オン・トップ』。後の2つに至っては検索するまでもなくその名前が思い出せるほど印象深いアトラクションだった。

 『リバー・ボート』は文字通り川の中をボートで進んでいくような感覚が味わえるアトラクション。ディズニーランドで言うところの『カリブの海賊』だろうか(ちなみにディズニーの『カリブの海賊』もお気に入りのアトラクションの1つである)。まず高い方へとボートが登った後、水の流れの中をゆったりと進んでいき、最後には11mの高さから滝を落ちるような感覚で下っていってフィナーレを迎える。その上層部でのんびりと水流の中をボートが進んでいく中、前に乗っていたバンドメンバーとお互いの姿を撮り合った写真が残っている。

 『フライング・カーペット』は何のことはない、船状の乗り物がグオングオンと前後に大きく揺れるブランコのように振り子運動を繰り返すだけの代物。それだけでは大して面白くはない。が、それに乗った神聖皇帝のリアクションが最高だった。不慣れな絶叫系アトラクションに凍り付く神聖皇帝。その横で振り子運動のピークに会わせてブッチャーの地獄突きのように掌を上に指を揃えて腕を突き出しながら、「ブシャーーッッッ!」とか叫び続ける私達。妙に楽しかった。

 そして一番のお気に入りが『スーパー・ループ・オン・トップ』だ。これはある意味斬新なアトラクションで、スピードではなく回転や捻りで勝負してくる。椅子に座った状態で360度グルングルン回されたり、完全に上下逆さま天地無用になった状態でピタッとしばらく静止し、「おやっ?」と思った頃に突然回転を始めたりして、とにかく変な重力体験をさせてくれるアトラクションだった。ジェットコースターは進行方向へのスピード感とGで勝負をするが、これは完全に天地無用の無重力状態で頭と足がクルクル地面に対して入れ替わる、そんな回転と万有引力に逆らう感覚が魅力のアトラクションだった。私とバンドの2ndギターをやっていたヤツはこれがとにかく好きだった。間を溜めてグルン、グルン、と回る度に、それに合わせて手を突き出し、「ブシャーーーッッッ!」とか叫んではゲラゲラ笑っていた。この乗り物が本当に気に入った私と仲間は、フリーパスを使って計4回ほど繰り返し乗ったものだ。大学時代にも1、2回ほどポートピアランドには来たが、その時もこの修学旅行でのことを思い出しながら、少し感傷に浸りながらこの『スーパー・ループ・オン・トップ』に乗っていた。

 神戸ポートピアランドには、そんな高校時代の思い出が詰まっている。新潟の、文字通り田舎の高校生にとって、あそこはもの凄く刺激的だったものだ。私達が神戸を訪れた数ヶ月後、あの阪神・淡路大震災によって思い出の地の1つである異人館は一旦潰れてしまった。だから、大学に入って初めてポートピアランドに行った時、『スーパー・ループ・オン・トップ』等の当時のアトラクションがそのまま残っているのを見たときは変に嬉しくなったりしたものだ。ポートアイランド自体は全体が液状化してしまい大変なことになったらしいけれど。

 そういった思い出の地がなくなる。寂しいことだ。もう二度と行けないんだなと思うと、閉園までの間にもう一度行きたくすらなってくる。まぁ、遊園地に一人で行くのはあまりに現実的ではないのだけれど。当時神戸の町並みがえらく気に入った私は、京都のホテルのベランダでバンドの仲間と酒を飲みながら(高校生だろ!? というツッコミは今更やめていただきたい)、「将来はこの神戸や京都で頑張ってみるのもいいかなと思った」と語ったことを覚えている。そしてその二年後、無事に立命館に合格を果たした私は京都に出てくることになるわけだ。

 神戸ポートピアランドもここ数年は客足が伸び悩んでいたらしい。この社会ではどんなに望んでも仕方のないことはあることはあることはわかっている。わかっているから、寂しいけれど閉鎖という事実をどうすることもできない一個人としては、せめて思い出を書いておくことでこの素晴らしい記憶をくれた遊園地と、高校時代への私達自身へのオマージュとして記録しておこうと思う。それは多分に感傷的な理由からだけれど。まぁ、たまには感傷も悪くない。

 これはまったくの余談ではあるが、修学旅行でポートピアランドを楽しんだその夜の京都の河原町での自由行動の際、私とバンドメンバーの一人はホテルに戻る時間になっても帰らずに教師をやきもきさせ、切れる寸前まで追いつめた。その理由は「夜に飲む酒を売っているところを探して買っていたから」だ。しかしそれ以前に家族旅行で何回か京都に来ていて、河原町の地理にそこそこ詳しい私のことを知っていた仲間達は、まったく心配をしていなかったらしい。「まぁアイツのことだからどこかで時間を忘れて何かをやっているんだろう」と。まったく、私はいつもそんなキャラだ(苦笑)。

3 件のコメント:

  1. オイオイ、卒業10年も経つのにワシャまだ神聖皇帝かい・・・。バカと無茶で彩られた高校時代は遠くになり、ゴルフに興じて株を転がす中年が一人できつつあります。

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  2. まぁ高校当時の話だから神聖皇帝だ。
    今は、・・・大学時代が四天王なら、今は何だ!?
    まだお互い中年というには早かろうが、アンタぁ確かに風格は中年級にあるかもなぁ(笑)。

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  3. ��SJがあるじゃないかwww

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