2007年3月17日土曜日

北へ南へ

 明日は妻を実家に送りに佐賀に行く。先週は札幌、今週は佐賀。週末日本を北へ南へ。我ながらよく動くものだ(苦笑)。

2007年3月5日月曜日

月とコスモクロック

月とコスモクロック 今日は久し振りに元町~みなとみらいへ出かけてきました。明日が妻の誕生日であることと、そろそろその妻は実家に強制送還される身なので、その前に横浜の休日を堪能しておこうという寸法です。何しろ実家から妻が再びこちらに帰ってくる時には家族が一人増えているわけで、しばらくはゆっくりと横浜を散策することもできないでしょう。ので、まぁ体は重いにしろゆっくりとはできる今のうちに見納めておこうというわけです。幸い今日は3月としては例外的に暖かく、気持ちいい青空も広がっていて、でかけるにはよい天気でした。

 電車で元町・中華街に繰り出し、まずは春並みの陽気の下、山下公園を散歩。たくさんの家族連れと犬連れに混じりながら、周りをベイブリッジとみなとみらいの高層ビル群に囲まれた海を眺めます。休日の山下公園はのんびりしていて、人は多いけれども割にスペースはあるのと、今日は特に風が気持ちよかったので、まったく狭苦しさを感じることもなく、ゆっくりスッキリと散歩することができました。柔らかい陽の光の中、潮風とカモメの鳴き声が心地よく感じられます。
 その後有名なパンケーキの店らしいモトヤで遅めのランチを取り、一路横浜へ。カバンを探してベイクォーターに行ってみるも、お洒落ではあるがあまり面白そうな店がなかったので(最近増えてる20代-30代のお金のある独身カップル向けと見ました)、今度はそごう、ジョイナス、高島屋とハシゴ。そして東急ハンズまで行くも全て外れ(苦笑)。この時点で夕方19時過ぎです。最後にクイーンズ・スクウェアに戻ってカバン探しを続行。しかし20時で閉店の段階でクイーンズ・イーストを閉め出され、本日のカバン探しは終了となりました。やれやれ・・・。
 そしてクイーンズのベランダ通路に出て一休みしようとすると、よく晴れた空に満月がポカリとコスモクロックの上に浮かんでいるのに気が付きました。光の扇風機のようにきらびやかに色を変えるコスモクロックの上に、目立たずに静かに佇んでいる満月。みなとみらいの街の灯の仲までは、さすがに満月の光も届きません。風情があるような、何だか味気ないような、不思議な都会の夜の満月。思わず一枚撮った写真がこれです。コスモクロックがきれいに光ってくれるまで、結構待ちました(苦笑)。その後クイーンズ・スクウェアの店で晩ご飯。たまたまコスモクロック側の窓際の席が取れたので、みなとみらいの夜景を楽しみながら、のんびりと横浜の夜を楽しんだとのことです。
 さてさて、次に二人でこんなにのんびりと横浜を楽しめるのは一体いつになるのでしょうか。

2007年3月4日日曜日

夜は短し歩けよ乙女

 表題の通り、『夜は短し歩けよ乙女』という小説を読んだ。この本、元々は久し振りのジャケ買いというか衝動買いというか、まったく予定外にポンと買った本だ。1-2月に仕事と弟の結婚式で計4回ほど大阪・京都に出かけた。その際、京都駅の文教堂でも梅田の紀伊国屋でもたくさん平積みされていたのがこの本だった。とりあえずはそのやや古風で珍妙なタイトルと、同じくやや古風な昭和チックな表紙が目に止まったわけだ。少し手に持ってみるも、京都や大阪では買わずに一旦そのまま帰ってきた。


 が、いざ買おうと思って探してみると、東京だとこの本はなかなか売っているところすらみかけない。今日初めてMosaic港北のBook1stで売っているのを見かけたが、それまで東京・横浜ではひたすらみかけなかった。結局他の本を買う用事と一緒にAmazonで買った。やけに地域差のある本だなと思ったが、恐らくそれはこの本の舞台設定に由来しているのだろう。そう、この本の舞台は京都だ。

 これは非常に可愛らしい恋愛小説だ。少しばかりの浮世離れと、意識的な時代倒錯を交えて、独特の文体で不思議にコミカルにテンポよく、恋愛小説特有の甘ったるさや気恥ずかしさを一切感じる間もなく読み切れる、実に爽快な希代の恋愛小説だ。以下にそのヘンテコな文体の一例を少し引用してみよう。

よろしいですか。女たるもの、のべつまくなし鉄拳をふるってはいけません。けれどもこの広い世の中、聖人君子などはほんの一握り、残るは腐れ外道かド阿呆か、そうでなければ腐れ外道でありかつド阿呆です。

彼女がその本を追い求めて古本市をさまよっていたことを聞いた刹那、「千載一遇の好機がついに訪れた」と直感した。今ここに一発逆転の希望を得て、ついにふたたび起動する私のロマンチック・エンジン。彼女と同じ一冊に手を伸ばそうなどという幼稚な企みは、今となってはちゃんちゃらおかしい。そんなバタフライ効果なみに迂遠な恋愛プロジェクトは、その辺の恋する中学生にくれてやろう。

 ・・・おかしな文だ。少なくとも、いわゆる普通の恋愛小説っぽい文ではない。この昭和っぽい錯誤を感じさせる文体の中にテンポよく小気味よく、珍妙なキーワード達が並べられてつなげられて行く。おともだちパンチ、詭弁論部、偽電気ブラン、李白、古本の神、韋駄天コタツ、パンツ総番長、象の尻、偏屈王、風雲偏屈城・・・。まだまだある。ハッキリ言ってこれだけでは意味不明だ(笑)。とても恋愛小説とは思えない。ところが、これが面白い。サークルの後輩に一目惚れした先輩が、彼女の目に少しでもとまろう、彼女の気を引こうとして繰り返す小気味いいドタバタ劇。春の夜の先斗町と百鬼夜行のような一晩の出来事を、夏の下鴨古本市とそこに渦巻く運命の連鎖を、秋の学園祭を巻き込む壮大な『偏屈王』の騒動を、冬至に猛威を振るう風邪の神様との闘いを、理屈っぽく妄想屋でネガティブな先輩と、明るくプラス思考でとぼけた彼女が、かみ合いすれ違い駆け抜けて行く。実に楽しい小説だ。なんとなく、新潟のとある仲間が読んだらどんな感想を持つかなと思ってもみた。ま、アイツは「この日本語は読む気にならん」とかその他の理由でバッサリ切って捨てそうだが(笑)。

 この小説は、実は技巧的にも単純ながらよくできている。出てきたキーワードはきれいに全部つながって行き、そして実に大量に、例外的に大量にキーワードが乱発されるにも関わらず、漏れもなければとって付けたように見えることもなく、非常にまとまりよく構成されて行く。スケールは小さいながらもここまでちゃんと構成がしっかりした小説は現代日本の小説家の中では久し振りに読んだ。流れ重視で全体の構成がアンバランスになっている小説が多い昨今、この作品は気持ちいい。

 甘酸っぱいが甘ったるくなく、ロマンチックだが気恥ずかしくなく、珍妙で滑稽で、単純だが巧妙で、ひよこ豆のように可愛らしい恋愛小説。本屋大賞にノミネートされたのもうなずける。久し振りに手放しに楽しい小説を読んだ。