2014年7月8日火曜日

モンゴル旅行記-2

  今回のモンゴル研修、14日はお勉強というよりはモンゴル体験を目的とした一日。ウランバートルを出て、およそ80kmほど離れているというテレルジ国立公園へ向かいます。テレルジはツーリスト向け観光地となっていて、観光客向けにゲルでの宿泊等ができ、シャワーや食堂も設置された体のいいツーリスト・キャンプです。とはいえ電気が使えるのかもよくわからないし、シャワーはお湯が突然水になるなんてザラだというし、そもそも日本ですらほとんどキャンプをしたことがない自分にとって、このテレルジでの一日がどんなものになるか、行く前は旅程の中で一番楽しみにしていた半面、不安も結構あったのが正直なところです。それでも道中、ウランバートルの終端のゲートをくぐると、そこからは昨日同様どんどん景色が変わっていって、洋風のレンガ積みの家があったと思えばそれにゲルが混じってきて、本格的な草原に入ったと思ったらそこに突然工場が現れたりと、窓の外を見ているだけでまたその日本ではおよそ見られない風景にテンションが上がってきて、その小さな不安は忘却の彼方に消えていきました。

   そのようにして草原をしばらく走っていくと、突如として現れるのがこの巨大なチンギス・ハーン像。風景の中に突如脈絡なく現れる巨大な像という点で、石川は加賀温泉の慈母観世音菩薩を思い出させます。でもきれいに風景に溶け込んでるから加賀観音ほどのシュールさはないですね。広大な丘と草原、そして青空に囲まれて立つ様はまさに大チンギス・ハーン。モンゴルでは至る所にチンギス・ハーンの像やブランドがある辺り、今でも相当な信仰があるのだなと感じられます。新潟における田中角栄より、もっとブランド力ある感じでしょうか。今後はこの像の周りに騎馬兵の像をたくさん建立して並べていくそうで、お金を出せばその兵を自分の顔にすることができるとか。一体いくらくらいでできるんでしょうね?若干気になります。その他、ここでは2000トゥグルグ払うと鷲を腕に乗せてくれる商売があったりして、自分もやってきました。結構ねぇ、重いんですよ鷲。空飛ぶ鳥だから見た目の割に軽いんだろうなと思って油断してたら、案外見た目通りに重い。これもいい体験でした。

   チンギス・ハーン像を出た後、次に立ち寄ったのがこの御坊。モンゴルにチベット仏教が入ってくる以前のシャーマニズムの聖地のようなものだそうで、このように石を積み上げて青い布等で飾って祀る、日本で言うなら地蔵のような感じでしょうか。長い旅に出る際は自分の村の御坊の周りを3回回って道中の安全を祈願するのがしきたりだそうで、我々も式に則ってやってきました。まず御坊の周りにある小石を3つあらかじめ拾っておき、1回回るごとに1つ、御坊に石を投げていくそうです。3回終わると手の中の石もなくなる。そのようにして、古のモンゴルの旅人は安全を祈っていたのだとか。今回のように大勢で周囲をグルグル回ると、絵面的には若干シュールな感じになりますが、そのシュールさがまた宗教っぽくてちょっといい感じだったりもしました。

 そしていよいよテレルジ国立公園の宿泊場所、ツーリスト・キャンプに到着します。ここは本当に風光明媚なところで、空が晴れている時であれば本当に気持ちがいい。よく撮れた写真を何枚か、これもFBに上げてあります。着いてから少々自由時間もあったので、辺りをちょっと散歩してみます。寝泊まりする場所であるゲルのところはさすがに舗装された道があるのですが、そこを出るともう後はただ草原。道もなく、当てもなく、ただ気持ちいい空、風、草と土の感触を確かめながら歩いていく。なかなかそんな散歩はできないなと、旅特有の幸せな高揚感の中で思いました。道がないのがいいのです。どこを歩いてもいい。道があって、歩くべきルートが決まっていて、辿り着くべき場所がある、そんな歩き方じゃなくてもいいじゃないかと、この岩山と草の丘に囲まれた、広大な大地でぼんやりと考えました。何だか、人生にも通じそうですね。この日の天気はモンゴルにしては珍しく少し不安定で、自分が散歩をしている間でも曇ったり晴れたり忙しく空模様は変わっていきましたが、青空におもちゃみたいな白い雲がぽかーんと浮かんだ草原は、何だかその真ん中にいるだけで気分がよくなる素敵な場所でした。よく「小さなことなんかどうでもよくなる」とか言いますが、そんな感じでもなく、どうでもよくなるのでなくただただ自然と気持ちいい開放感。この風景はそんな気分にさせてくれます。


 お楽しみここで我々が宿泊するゲルは4人部屋でこのような感じでした。装飾もきれいなところですが、昼間であれば天窓から入る明りで、電機などつけなくても普通に明るい。特に生活するには支障がない程度の明りは天窓からの自然光だけで充分確保できていました。やっぱりこのゲルというものも、機能的によく考えられているんですね。このキャンプのゲルは違いますが、昨日お邪魔したトマト農家の方のゲルではソーラー発電で電気を確保していたりして、現代のゲルはさらに機能性を増している様子です。

 そしてこの後まだ、このテレルジではモンゴルの遊牧民の一般家庭を訪問し、乗馬体験をしと、モンゴルならではの刺激的な体験が続いていくわけです。

2014年7月7日月曜日

モンゴル旅行記-1


  さてさて、七夕が開設記念日のこの雑記帳。16年目となる今年は先日行ったモンゴルについての旅行記など、久しぶりの更新となりますが書いてみたいと思います。

 去る6月12日~16日にかけて、新潟クボタが創立50周年記念事業の一環として行っている農機具屋の後継者研修の一環として、自分はモンゴルに行ってきました。12日と16日はまるまる移動日となっていますので、正味3日間の行程です。正直それまでモンゴルなんて行こうと思ったことはなかったのですが、これが行ってみたら実に素晴らしい。昨秋香港に行った時は初めての海外旅行ながら一応英語も通じるし、基本的に東京と同じような都市で治安もよく、「まぁまぁ何とかなるかな」くらいの旅でしたが、このモンゴルは全然違う。風景も、料理も、人々の暮らしぶりも日本とはまったく違い、アジアに通じる文化を底に置きながらそこにロシアの影響は色濃く受けつつも、欧米風の文化とも明らかに違う。もちろん英語なんて一部でしか通じない。文字通りカルチャーショックと言いますか、こんな風景の中でこのような暮しが実際に行われているのかと、それこそ価値観が変わるくらい刺激的な旅となりました。その意味で実に海外旅行らしい、刺激的な体験だったなと思っています。

12日の朝に新潟空港を出て、その日は仁川を経由してウランバートルに着くのが深夜11時過ぎ。ホテルに到着した時には深夜0時を回っていて、それでいて翌朝8時にはホテルを出発というなかなかの強行軍で始まったモンゴル研修。まず行くのはモンゴルでトマトを栽培している農家さんのところです。元々は新潟の農家さんのところに研修に来ていた方だそう。モンゴルでは野菜を食べる文化があまりなく、トマト栽培も周辺ではその方くらいしかやっていないとか。この農家さんの研修面でのレポートはFacebookに上げておいたのでそちらをご参照いただいて、ここでは別のお話をしたいと思います。

 モンゴルの夏は9時とか10時にならないと暗くならないとはいえ、ウランバートルに着いた時はさすがに真っ暗な深夜。ホテルに着くまでの道程では町なみ、風景はよくわかりませんでした。朝になって見えるその町なみは、ウランバートルに関して言えば普通に都会です。ロシアの影響が色濃く出ているとはいえ、ビルが立ち並びます。けれどもそこから農家の方のハウスへと郊外に向かうと、ある時点で一気にビルは消え、草原、丘にバラックやゲルが並ぶ風景に変わってきます。写真はまだそうした家の密度が高いですが、次第にその数も減っていき、緑が目立つようになってきます。そして途中からは道路も舗装されておらず、土と石を巻き上げながら、ところどころ陥没した道に大きく揺られ、当然車線なんてない中で時たま対向車とすれ違いながら進みます。そして次第に西洋風の建物は減っていき、逆にゲルが目立って増えてくる。放牧されている羊や牛、馬といった家畜。そんなものが実際に目に飛び込んでくるのがとても刺激的で、何と言うかそれだけで「ああ、外国に来たな」という感じがしてワクワクしてきました。香港はきれいに整備されてましたからね。この感覚はない。そしてその見慣れぬ風景の果てに唐突に表れた場違いな感じのビニールハウス。バスを降りてその景色を見た時の高揚感はなかなかのものでした。もう完全に観光のまなざしモードですが、このハウスがある辺りは別段観光地というわけでもないので、外国人の目を意識して町なみが作り込んであるわけではない。そこがまた逆に生活感がリアルで、ゾクゾクしたのです。明らかに日本とは違う景色に文化、生活様式。それでもここで人は生活しているのだなと、その当たり前のことがとても新鮮に感じられて。

 こちらのトマト農家の方のハウスで見てきたことは先述のようにFBに譲りまして、ここではさらに農家の方が我々をお手製のモンゴル料理でもてなしてくれました。馬乳酒やチーズ(馬か羊か山羊…どれだっけ?)、羊のヨーグルト、干しヨーグルト…、どれも正式名称を失念しましたが(オイ)、たくさん用意して歓迎してくれました。自分としてはやはりまず外せないのが馬乳酒。写真左上になります。実際飲んでみると酒と言ってもアルコールの感じはあまりせず、むしろ乳酸系のすっぱさで日本で売ってるヨーグルトの上澄みに溜まってる乳清をもっと強烈に生臭く乳臭くしたような感じ。日本人的には正直あまり美味しい感じではありません。馬乳酒はやはり皆さん気になるのか、とりあえず飲んではみるものの、ほとんどの方は「これダメだ」と残しておられた様子。まぁ日本人向けに味を調整とかまったくしていない、ホントに手作りのものですから無理もないかもしれません。自分は全部飲み切りました。馬乳酒はちょうど夏の始めにでき、その頃から夏の間飲み続けるんだとか。

 一般的には一年で最初に馬乳酒を飲んだ時は必ず下痢をするそうです。そしてその後は大丈夫になるとか。自分は一杯半しか飲まなかったせいか下痢までしませんでしたが、その話を聞いてちょっと警戒していました。野菜を食べる習慣のないモンゴル人は、馬乳酒を飲むことでビタミンやミネラルを補給しているそう。だから子供も飲むんだそうです。しかも肝臓にとてもいい飲み物だそうで、肝臓が悪い人には薬代わりにもなるとか。自分の感覚だと「お酒が肝臓の薬って…」というところですが、それが文化というものなのでしょうね。馬乳酒が食物繊維の代わりに腸の調子を整えているんじゃないかという研究まであるそうで、馬乳酒、結構マルチに大活躍です。

 ちなみに写真左下はヨーグルト、右下はこの後モンゴルにいる間何度となく食べることになるでっかい餃子(ホーショール?)で、肉は羊が使われています。チーズ等も含め、基本的には自分は美味しくいただけたのですが、干したヨーグルトだと言っていた、ビャスラグっていうのかな、あれだけはちょっと苦手でした…。ちんすこう以上にパサパサした、生臭いヨーグレットみたいな感じ。それでも手をつけた以上は月餅くらいの大きさのを一つ食べきりましたが、いやいや時間かかりました…。

 こちらではモンゴルでまだ実例がほとんどないトマト栽培の苦労もそうですが、観光地と違って一切手加減なしのモンゴルをまず体験させていただいたのが衝撃でした。景色もそうですが、馬乳酒やビャスラグ等々、ホントに現地で味わわれているものをそのままいただけたのがとても嬉しかった。もちろん合う部分もそうでない部分もあるわけですが、それも含めて文化の違いというのはこういうことなんだなと、文字通りのカルチャーショックを受けて再びバスに乗り込みました。
 その後は同じくモンゴルで花卉栽培を行っている日本人の方のところへ研修でお邪魔しました。こちらもFBにレポート上げてますので、詳細はそちらをご参照いただければと思います。FBに上げてない裏話として、モンゴル人の花の好み。今シーズン無事に一万本を売りきったチューリップですが、売れたのはすべて通常タイプのもの。花弁が細かく分かれるパーロットタイプというものはまったく人気が出ず、仕方ないからスタッフや近しい人にタダでいいから持って帰ってくれと言っても誰も持って帰ってくれなかったとか。それでも用意したパーロットタイプは割合的には極端に少なかったので事なきを得たそうですが、好みに合わないものはまったく売れないのがモンゴルの風土のようです。花卉栽培の方に言わせると、モンゴルではドカンとわかりやすい色合いの花が一般に好まれるそうで、日本でいういわゆる侘び寂びを感じるような清楚な花はあまり好かれないんだとか。文化の、違いですねぇ…。

 この日の研修最後は本命、モンゴルでの米輸出事業を行っているMJパートナーズ様訪問。この時の内容もFBに上げてます。こちらではとにかく熱烈な歓迎をいただき、着くとまずスタッフの女性がモンゴルの伝統衣装に身を包んで迎えてくれ、たくさんのお菓子も用意していただいており、それだけでもモンゴルでの米輸出ビジネスが今上り調子なんだなという空気が伝わってきました。やっぱりね、違うんですよ、上り調子に勢いのある会社の空気は。前職でも、そうした会社にお伺いした時は同じような空気を感じていました。明るいのもそうなんですが、何と言うか一緒にやっていこうとする前向きな善意というか、そういうものを感じるんですよね。正直な所、なかなか今の新潟では感じることができないその空気。久しぶりにここで思い出させていただきました。

 この後は昼食後にチンギス・ハーン広場観光、夕食…、と流れていき、非常に刺激に満ちたモンゴルの一日は終わっていきます。なお、モンゴルではウォッカがよく飲まれていて、食事の最後の方になると当然のようにウォッカが出てきます。チンギス・ハーン・ウォッカなる銘柄をこの日はしたたか飲んで、普通に美味しいウォッカではあったのですが、その後ホテルの部屋に戻ってスマホいじっていたら、まったく気付かない間に完全に寝落ちして朝を迎えていました…。きっと知らない間に一気に回ったんだろうなぁ…。恐るべし、モンゴル・ウォッカ。

 そして翌日はテレルジのツーリストキャンプへ。いよいよ本格的な大草原に出て、モンゴルの大自然を体験です!