2005年6月29日水曜日
和暦と西暦
Macallan - マッカラン12年 1990 ハイスピリッツ・コレクション
Distillery : Macallan Years : distilled in May 1990 and bottled in November 2003, aged 12 years Area: Speyside Bottler : High spirit's Collection Cask Type : ex-Sherry Product : 46% vol, 700ml Price : 8,000yen Remarks : without any colouring and chill filtering |
言わずと知れた"シングルモルトのロールスロイス"、マッカランのボトラーズもの。イタリアのボトラー、インタートレード社のハイスピリッツ・コレクションというブランドで、Lochs and Castles of Scotlandというシリーズもの。このシリーズは基本的にシングルカスク、無着色、無冷却濾過で、蒸留所の周りの風景や城等の美しい石版画がラベルに描かれているのが特徴。私が手にしたボトルはカスクナンバー42の樽からの19/332と手書きでシリアルが振ってあった。
濃いアンバーの色合いからもわかるし裏ラベルにもしっかり書いてあるが、シェリー樽で長期間しっかり熟成されていたため非常にシェリーの風合いが強い。マッカランはオフィシャルものもシェリー樽熟成が味の要だし(新しいシリーズではオーク樽も標準で出てきたが)、実際仕上がりも非常にオフィシャルのマッカランに近い。ただし、最初の一口を飲んだときはもの凄く濃いなと思った。シェリー特有の醤油のしょっぱさと蜜の甘さが混じり合ったような濃密な香りがそのまま味にも乗り移った感じで、正直しょっぱいくらいに濃かった。思わず少し水で割ったくらいだ。マッカランの味がもの凄く濃縮された感じ。最初にはちみつのような甘い香りと味が口の中に広がり、後味が抜けていくにしたがってしょっぱさが舌に残っていく長い余韻。最初の印象は、「強烈なマッカランだなぁ」というものだった。
ところがこのボトル、栓を開けてからしばらく経つと、なんだか知らないが段々味がこなれてきた。開けたばかりの頃にあった刺激的なまでのしょっぱい個性は尾を潜めて、マッカラン固有の枯木の中の蜜のような落ちついた丸い甘みと香りが目立ってくるようになった。開けてから約半年がたった今では、当初は水で割ろうと思った程のしょっぱさと刺激が完全に消えてしまって、カドが取れてマッカランらしい落ち着きを見せている。とはいえオフィシャルのマッカランに比べればまだまだ味は濃いけれど、逆に言えばより一層マッカランが楽しめる。中には栓を開けてからこんな変身を見せるモルトもあるものなのだなと思った。樽の中でもないのに。
2005年6月27日月曜日
Cragganmore - クラガンモア12年
Distillery : Cragganmore Years : aged 12 years Area : Speyside Bottler : Official Cask Type : burbon Product : 40% vol, 750ml Price : 3,000yen Remarks : - |
普段飲み用としてタリスカーと並んで愛飲しているスペイサイドの銘酒。スペイサイドの代表格と言えばやはりなんと言ってもマッカランだが、個人的には同じ12年もの同士だったらこのクラガンモアの方がおいしいと思う。ちなみに、オールドパーの原酒としても有名。
「すべてのモルトの中で最も複雑な香り」と呼ばれるクラガンモア。その最大の特徴はやはりビンを開けた瞬間に広がる軽やかな香りだろう。蜜のようなトロンとした甘さではなく、さっと溶けては消えていく和三盆のようなべとつかないさらりとした控えめな甘さと、草木の緑のような新鮮な空気があっという間に広がっていく。ビンを開ければもうグラスに注ぐ前からわかるほど香りの広がりが早い。口当たりもスムーズで、上品な甘みを感じたかと思うと、すぐに甘みは形を変えて新鮮な緑の空気やもう少しドライな落ち葉のような後味を残してきれいな余韻を残しながら消えていく。軽やかで雑味が少なく、かといって印象が薄いわけでもなく、しっかりと奥深いボディを持ったこのクラガンモアは間違いなくモルトの傑作の一つだ。
この蒸留所は1869年の設立以来、現在に至るまで設備・手法ともほとんど変えずに運営されているそうで、普通と違い上部が平らなポットスチルを使って蒸留する、その独特なポットスチルの形が蒸留中に上記の中の不純物を取り除くのだという。マッカランやボウモアのように製品ラインナップが豊富なわけではなく、オフィシャルで通常販売されるのは12年ものだけというのが少々寂しいところではあるが、まぁ贅沢言わずにこの12年を堪能していれば十分という気もする。それほど、よいモルトだ。
2005年6月26日日曜日
泡盛 千年の響
製造元 : 今帰仁酒造所(「なきじん」と読むそう) 熟成年数 : 10年 地域 : 沖縄 原材料 : 米・米こうじ(黒麹菌) 製品情報 : 43度, 720ml 価格 : 4,000円前後 備考 : 限定品(どう限定なのかがイマイチ不明) |
泡盛の長期熟成古酒の名品。アルコール度数が原酒そのまま未調整の43度のものと、加水調整された25度のものがある。昔払うやたっちーと日本酒の利き酒会に行った際、20種類程日本酒にまぎれて出品されていた焼酎の中から見つけた。当時は今のような焼酎ブームではなかったため、日本酒に比べて焼酎の出展ははるかに少なかったし、注目度も低かったように思う。その中で、他の日本酒と比べても一際印象が強く、おいしいと感じたのがこの『千年の響』だった。
液体は品のよい明るい琥珀色。普通焼酎は無色透明で、長期熟成ものでも木の樽でなく瓶で寝かせるのが一般的なため、このように色が着くものは珍しい。樫樽で10年間寝かせている間に染みた自然な色で、着色は当然していない。ウイスキーと同じ原理だ(ウイスキーは中には着色しているのもあるが)。刺激の少ない、米の糖質のまろやかで丸みを帯びた、おとなしい甘さの香りが特徴的だ。口に含むとさらっとした米特有の甘みが舌を滑るように通り抜けていく。やや高めのアルコール度数だが非常にこなれているため刺激はまったくといっていい程感じない。口の中にほのかな丸みのある甘みと香りをほんの少し残して、嫌みなくすっと消えていく余韻は実に鮮やかで飽きがこない。泡盛というイメージから連想されるクセの強さはまったく感じさせない、じつにこなれた酒だ。その熟成のさせ方といい色合いといい、まるでウイスキーのような香りと飲み口だが、正直下手なウイスキーより余程よく熟成されてカドが取れている。素晴らしい古酒だ。
この『千年の響』はやはりロックかストレートがお薦め。アルコール度数は高いものの非常によくこなれていてカドが取れているので、刺激はほとんど気にすることなく飲めるでしょう。
束の間の休息
Rosebank - ローズバンク12年 1992 キングスバリー
Distillery : Rosebank Years : distilled in 1992, aged 12 years Area: Lowland Bottler : Kingsbury Cask Type : ex-Sherry Product : 46% vol, 700ml Price : 6,980yen Remarks : Exclusive bottling for Shinanoya |
よくシングルモルトの購入に使わせてもらっている信濃屋さんが出したオリジナルボトル。オリジナルと言っても独自ブレンドとかいうのではなく、オリジナルボトラーズものといった感じだそう。今回は何とケルティックシリーズやハンドライティングシリーズで有名なあの名門ボトラー"キングスバリー"が信濃屋さんのために特別にボトリングしたとのことで、非常に期待をして購入しました。カリラとマッカラン、そしてローズバンクと3つの選択肢があったのですが、今回買ったのはこのローズバンク。何となく一番おいしそうに見えたのです(爆)。90本限定のうち85本目だと手書きでシリアルナンバーが入ってました。
ローズバンク蒸留所自体は1993年に閉鎖されてしまい、もう新しくストックが増えることはありません。今樽の中で熟成を深めながら眠っている分がなくなってしまえばもう二度と味わうことのできないモルトです。今回のものは1992年蒸留とのことなので、閉鎖の前年に仕込まれたもののわけです。そう考えると何だかもったいない気もしてきます。
ローズバンクはローランド地方の特徴であるスコッチとしては珍しい3回蒸留を行って原酒を作っていることで、これはアイリッシュウイスキーと同じ回数です。その味わいはソフトでスムース、フレッシュでドライと一般的に言われていますが、それも3回蒸留で余計な成分が飛んで軽くなるが故の味わいなのかもしれません。
そのつもりで開けてみます。ふたを開けた時の印象は割に穏やかで、香りが一気にふわっと広がっていくという程強烈な感じはありませんでした。シェリー樽熟成特有の、私に言わせれば生醤油のような香りに混じって、ほんのり蜜のような甘い香りがしてきます。グラスに注いで香りをかいでみると、トロンとしたはちみつのような濃密な香りが、部屋中に広がるというのではなくグラスの中に組成の重い物質のようにたまっている印象です。一口飲んで、「甘い!」と思いました。とにかく甘い。香りの通りはちみつのような甘さ。ここまで甘いモルトは初めてです。飲み込んだ後の後味も、香りは蜜のような甘さから草のようなフレッシュな香りにすっと移行して消えていきますが、そのトロンとした甘みはいつまでも下の上に残って消えません。シェリー樽熟成特有の少ししょっぱいような甘みではあるのですが、ここまで強烈なのは初めてです。ローズバンク自体飲むのはこれが初めてで、オフィシャルものとの比較もできないのですが、元々こんなに甘いモルトなのでしょうか?スペイサイドのヘザーハニースタイルの極端な具現化のような、そんな印象を持ったモルトでした。こういう濃厚な甘みのあるモルトは、疲れた時に飲みたくなるかもしれないですね。
2005年6月24日金曜日
五里霧中の休息、わずかに
2005年6月20日月曜日
革靴購入
2005年6月19日日曜日
蛍
山中の幹線道路は蛍を見にくる人で渋滞こそしていたものの、基本的には周囲にはただ川が流れるのみで街灯も必要最小限しかない、暗い田舎の道だ。そこから車を降りて川沿いに数分程上流に歩く。そう、ほんの数分だ。川の水が流れる音を左側に、走り去る車のエンジン音を遠い背後に、草を風が揺らす音をあらゆる方向に聞きながら、同じく蛍を見にきた人々の、周りの草木や夜の闇に比べればあまりに控えめで頼りない雑踏と共に、懐中電灯で足下を照らしながら歩いていった。
蛍の光は静かだ。光を形容するのに音の表現を持ち出すのも妙なものだが、素直にそう思った。静かな光だと。暗闇の中に、まるで無から光が生まれてくるかのように青白い光がふうっと浮かんでくる。熱を感じさせず、かといって冷たさを感じさせるわけでもなく、暗闇を自由に音もなく移動しながら、静かな光が浮かび上がっては消えていく。星の光に似てるなと思った。数多の星が夜空に浮かぶように、数多の光が暗闇に包まれた山川に浮かぶ。その静謐な光がイルミネーションのように浮かび上がっては消えていく景色は、そう、幻想的というよりも、幽玄という言葉がしっくりくるように思えた。人が作り出した幻想ではなく、奥深い自然の幽玄さ。静かに、地上で瞬き、浮かび上がっては消えていく蛍の光。こんな光景があるのだなと、素直に感動していた。
人が作り出す光は刺激的だ。蛍が見える沢の場所は山中の幹線道路からは歩いて数分かかるところにあるが、それでも車の光は届く。遠くを照らすオーバーライトが、おそらく1km前後の距離を超えて、ほんの微かにだが景色を照らす。それは照らすという程強烈なものではなく、実際車のヘッドライトが届いたからといって景色が見えるようになるわけでもないのだが、ただ"光が届いている"というのはわかる。そして確かに、車のヘッドライトが届いている間はその光に蛍の光は打ち消され、ぼやけてかすんで見えてしまう。携帯やデジカメのフラッシュも同様だ。景色を照らせる程強い光ではない。だが、蛍の光は打ち消してしまう。正直、邪魔だと思った。車のライトはある程度仕方ないにしても、どんなに頑張って携帯やデジカメでこの景色を撮ってみたところで、こんな人の作り上げた光に比べると弱々しくすら感じる程の光がきれいに写るわけはないし、ある程度写ったところで所詮本物には敵わないに決まっている。それなのに、どうして今実際にこの目で見て体感している感動を嘘くさいフラッシュで希釈してまで外部記憶になど残そうとするのだろう。それが不思議でならなかった。少し考えて、わからないのかもしれないなと思った。そして、少しかわいそうになった。これはおそらくモラルの問題以前に感性の問題だ。わからないんだろう、と。まぁでも、とりあえず外部記録に残そうとする程度には蛍の光に心動かされる感性はまだ残っているのだろう。まだ、マシなのかもしれない。
帰り道、車の近くまで来た時に、手の届く草むらの中に群れからはぐれてしまった蛍が光っていた。つかまえて、両手を組んでかごのようにした中で少しの間観察してみる。蛍の光は遠くから見ると青白い星の光のように見えるが、近くでは黄緑色の発光ダイオードのようにも見える。掌の上で黄緑色の星がふうっと光っては消え、光っては消える。やはり、熱くはない。不思議な感じがした。草むらに放した蛍は、見ている間に最後もう一度光った。なるほど、地上に星があったら、こんな感じなのかもしれない。そう思った。
2005年6月16日木曜日
不調と頭痛と危機管理
とか思っていた矢先、昨晩は久々にビッグなトラブルと納品のダブルパンチにやられ、体調も優れないままにまんまと一睡もしない完徹で作業をしていました。いやー、一人でそこそこ大きいバッチプログラムを一晩に2本も組みましたよ(そこそこ凄いことだと思う)・・・。そして気付いたら頭の痛いのも吹っ飛んで、今日は寝不足の割にやたら元気な一日を過ごしていました。いやー、危機感から大量放出されたアドレナリンがどうにかしてくれたのでしょう。結局、己の病を治せるのは己だけということでしょう(?)。