2006年4月3日月曜日

Glenmorangie - グレンモーレンジ アーティザンカスク






グレンモーレンジ アーティザンカスク
Distillery : Glenmorangie

Years : aged 9 years

Area : Highlands

Bottler : Official

Cask Type : first fill/hogshead

Product : 46% vol, 500ml

Price : 7,000yen

Remarks : Glenmorangie Artisan Cask


 北ハイランドを代表する蒸留所グレンモーレンジ。作られるモルトはすべてモルトとして出荷され、一切ブレンド用に回されることはないという、ある意味気高い蒸留所でもある。本場スコットランドではグレンモーレンジが一番多く飲まれているのだとか。ウッド・マネジメントという言葉・概念を作り出し、蒸留した後原酒を寝かせる樽に非常に強いこだわりを持つことでも知られる。ポートワインやマディラワイン、シェリー等でフィニッシュされたウッドフィニッシュ・シリーズはもはやグレンモーレンジの定番になっている。思えばこの蒸留所に関してはブレンドに回されないどころかボトラーズものすらほとんどみかけない。熟成を行わせる樽に強いこだわりと研究心を持つこの蒸留所にはボトラーがただ原酒を買い取って自分のところで熟成させてもオフィシャルを超えることができないからなのかもしれない。あるいはただ単にボトラーにも原酒を回していないだけなのだろうか?

 ともあれそのグレンモーレンジがウッドマネジメントの集大成として出してきたのがこのアーティザンカスクだ。同蒸留所がモルトを寝かせる樽にふさわしい木材を探求するところから始まったこの品には、グレンモーレンジのウッドマネジメントに対する並々ならぬ執念が感じられる。何と言ってもパッケージにどのように作成された樽かが詳細に書いてあるのだ。

 同蒸留所は樽に理想的な木材を探してアメリカ、ミズーリ州のオザーク山に行き着いたと言う。そこは日当たりも悪く、土地もあまり肥沃ではない。だからこそモルトの熟成に向いた木材が育つという。日陰が多く、栄養も少ないところでゆっくりと成長した木からは、年輪が密に詰まった樽に最適な木材がとれる。その中でもさらにアーリーウッドと呼ばれる春材(早材)の部分はレートウッド(秋材)に比べると顕微鏡で見た際にスポンジのような構造で吸水性に富んでいる。その木材を通常機械で2週間程で乾燥させてしまうところを敢えて自然乾燥で2年間かけて乾燥させ、それを用いてこのアーティザンカスクの樽は作られている。樽1つにとんでもないこだわりようだ。

 そのこだわりが生み出したこのアーティザンカスク、実際に飲んでみると実に素晴らしい。色は明るい金色で、9年という比較的短い熟成期間故のフレッシュさが感じられる。香りも軽やかという程広がりもせず、重くという程グラスに溜まりもせず、ふわっとほどよく柑橘系とバニラのような上品な甘さを持って広がっていく。マッカランを始めとするシェリー樽熟成系とは明らかに香りの質が異なる。口に含むと実に滑らかで、フレッシュな柑橘系の香りと甘みがしっかりと広がっていき、すっと消えていく。このモルトの面白いところはその後味で、一旦余韻が消えたかなと思った頃に、最後にまたもう一回口の奥から少々まったりとしたバターのようなフルーツのような不思議な甘みが蘇ってくる。またその感覚がよい。

 グレンモーレンジが生み出した徹底的な樽へのこだわりによるこの逸品は、9年という短い熟成期間にも関わらずその倍の時間を経た他のモルトと比べても遜色のない素晴らしい出来映えだ。何しろ私は5,000円以上のモルトをこのアーティザンカスクで初めてリピートした。アップした写真は2本目のもので、今1本目の最後の一杯を飲みながらこれを書いている。容量が500mlとやや少ないことを考えると、やはり少々値の張るモルトであることは確かだが、それにしても掛け値なしにおいしい。作り手のこだわりと執念は、9年の熟成でもここまでおいしい程のものを作り出せてしまうのだなと畏敬の念すら覚える。このモルトは長期熟成でもいけると思うので、いつかきっとアーティザンカスクの長期熟成ものが出てくるだろう。その時は、きっとさらに激しく値が張るだろうけど、是非飲んでみたいと思う。あと何年後かわからないが、楽しみだ。

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