2002年7月28日日曜日

デビッド・ラッセル『Reflections of Spain』レビュー

 デビッド・ラッセルの新譜を手に入れました。2枚同時リリースのようですが、そのうちの片方、『Reflections of Spain - Spanish Favorites for Guitar -』です。いや~これがまたヤバイ。ラッセルは元々私が手放しに大好きだと言える数少ないギタリストの一人ですが、このアルバムはヤバイです。

 ラッセルは元々透明感のある美音と卓越した表現力に定評のあるギタリストです。それはこれまでの彼のレパートリーの中心である古典~バロックからバリオスといった辺りでは素晴らしい武器なのですが、逆にスペインものってラッセルには似合わないんじゃ的な不安もありました。ですが、このスペインの曲集は素晴らしいです。スペインと言えば「情熱的」という単純なパラダイムを打ち破り、情熱も叙情も、あらゆるスペインの情景を見事に描き切ったような美しい描写が素晴らしいのです。収録されているすべての曲が決定的な名演です。特に素晴らしいのはラッセル自身が編曲したグラナドスの『アンダルーサ』と『詩的ワルツ集』。『アンダルーサ』はこれまで誰の演奏を聴いても何故か曲の輪郭がぼやけて、なんだか印象の薄い感じのする曲だったのですが、ラッセルは見事に曲の輪郭をとらえて情緒深く弾き切っています。そして『詩的ワルツ集』。まず感じたのが「どうやったらそんなに綺麗に和音響かせられんだよ!?」ということ。曲の入りの高音の二重和音、その響きのあまりの美しさにやられました。この曲はブリームやジョン・ウィリアムズなど、色々と高名なギタリストの手によって弾かれてきましたが、ここまで綺麗に曲が響いている演奏はありませんでした。その他の曲もクラシックギターやってるなら知らない方がモグリというくらい有名な曲ばかりなのですが、その有名で弾き古された感があるスペインの名曲達に、彼はことごとく新しい命と視野をふきこんでいます。おそるべし、デビッド・ラッセル・・・。ここ一ヶ月くらい続いていた私のバイオリンコンプレックスを一気に払拭してくれました。そう、ギターという楽器はこんなにも美しい!

 ちなみにラッセルは他にバロックのCDを3枚(出し過ぎ!)、古典期のCDを1枚(アグアドの『序奏とロンド』とメルツの『エレジー』、『ハンガリー幻想曲』が最高!)、バリオスのCDを1枚(『森に夢見る』や『大聖堂』、『最後のトレモロ』は必聴!)出してますが、どれもよいですよ。

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