2006年9月3日日曜日

夏から秋へ

 空を見たら、もう青空に浮かぶ雲が随分と高く、繊細になっていた。青空高くに浮かぶ鰯雲。真夏のような深紅でなく、淡いピンク色に控えめに空や雲を染めていく夕陽。今年の夏も、もう終わる。いいでもなく、悪いでもなく、季節は変わる。

 四季の変わり目で、夏から秋への移ろいが一番哀しい。夏が終わって秋が来ていることに気が付くのは、毎年空の高さを見てだ。夏がもう終わりに来ていることに気が付くのは、いつも妙に哀しい。春から夏へは、新緑とその木々や葉を照らし、輝かせる太陽の日差しで気付く。この変化はすがすがしく、また少しだけ浮ついた胸騒ぎがする。秋から冬へは、雪が降る一歩手前の、ピンと張りつめた澄んだ緊張感のある空気で気が付く。この変化は哀しいでもなく、嬉しいでもなく、少し雪が懐かしく、同時に逆に身が引き締まる思いもする。冬から春への変化は、開きかけた桜の花に注ぐ柔らかな陽光。また、春が来るかと少し優しい気持ちになれる。

 そう思いを巡らすに、やはり夏から秋への移ろいは他とは違う独特の哀愁がある。『秋に想う』ではそれを"過去の亡霊"と表現した。それは今も当たっているのか。一つの頂点が終わり、終焉に向かっていく。そして終焉からまた新たな始まりが生まれ、頂点に向かっていき、達したところでまた果てる。四季が織りなす永遠のパッサカリア。四季という主題に基づく一つのバリエーションが、また今年も終わりを告げようとしている。

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