2004年6月10日木曜日

夜を這うもの

 もう日も落ちた六月の夜の九時すぎに
 雨上がりの黒く濡れたアスファルト
 飲み屋のネオンが照らす道を
 チャバネゴキブリが歩いていた
 水に足を取られるのかなんなのか
 体を重そうにのそりのそりと

 そんなゴキブリを詩にするなんて
 なんだかチャールズ・シミックみたいだと苦笑しつつ
 少なくはない人通りの下を
 かいくぐるように這うゴキブリを思い出す

 暗い夜に黒い道路、漏れた光に浮かぶゴキブリ
 誰も気付かずにまたいで過ぎ去り
 ゴキブリはゆっくりと前に進む
 僕は気付いて足をかわして
 ゴキブリはゆっくりと前に進む
 東京の夜の雨上がりに
 濡れた黒い道を進むゴキブリ

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