2004年10月28日木曜日

ファンホ・ドミンゲス

 ファンホ・ドミンゲスというギタリストのコンサートに行ってきました。イエペスに「ギターの流派はアンドレス・セゴビアで終わり、ファンホ・ドミンゲスで新たに始まる」と言わしめ、フラメンコのペーニャ一族やパコ・デ・ルシアも一目置くという、アルゼンチンはブエノスアイレスが生んだ天才ギタリスト。その彼がピアソラを弾くというのなら、それはもう行くしかありません。友人に誘われるまま、ほとんど何の下準備もなしで公演数日前にチケットを取って行ってまいりました。

 感想としては、「コイツぁジャンゴ・ラインハルトもアル・ディメオラも山下和仁も一人でやっちゃうなぁ」という限りなく諦めに近い感服ってところですか。気分よくリズミカルにコードを刻んでいたかと思えば、突然息の長い超速スケールを延々と回し続けたりする。ショパンの『英雄ポロネーズ』をアップデンポ気味にギター独奏で弾ききる人間がいるとは思いませんでした。あれを聴いた時は正直「アホだ、コイツ」と思ったくらいです(笑)。無茶すんなと。指でクリス・インペリテリ並のスケール回してましたからね。一緒に行った友人と、「ヤツぁ単純な速弾き勝負でもアル・ディメオラに勝てんじゃねーのか!?」と盛り上がってました。もういい尾爺さんなんですけどね、凄いんです。

 さらに圧巻なのが随所で用いるそのトレモロ。おかしいんです。普通トレモロって、pamiで順番に回して行くもんですが、ファンホ・ドミンゲスはそうじゃない。amiでパララララ・・・って回しながら、そのamiのどのタイミングでも自由自在にpでメロディー刻んでくる。amiが弾弦するタイミングと同時にです。しかも、1つの弦をトレモロするだけじゃなくて2つの弦や3つの弦を同時にトレモロして、和音で綺麗に粒揃えてトレモロするのです!あれは凄いです。できねーよ(爆)!そんな超速スケールや和音トレモロ、果ては複雑怪奇な右手運指のアルペジオまで含めて、実に斬新な編曲で演奏される『アディオス・ノニーノ』や『チキリン・デ・バチン』、『アルフォンシーナと海』等は圧巻でした。右手が器用すぎます。さらにUNとキムが独重で演ったあの『チャルダッシュ』も、テンポは凄まじく早いもののえらいハワイアンっぽいライトな編曲で(苦笑)、恐ろしいスケールを回しておりました。いやー、久々に聴くとやっぱあの曲凄いね(笑)。

 惜しむらくは演出ですね。演奏は超一流なのに、いちいちナレーションや余計な演出が入るステージングは、明らかにコンサートというよりはナイトショー。素人のおじさまおばさま向けの、今にも加山雄三が出てきそうなその演出が、せっかくの一流の演奏を三流以下のステージにまで貶めていたのが残念です。な~んか、N○Kの歌合戦とかそんな雰囲気なんですよねー・・・。っていうか、あのえらい昭和的俗っぽさの演出の数々、絶対裏でNH○が絡んでるとしか思えないんだよなー・・・。まぁ、ドミンゲス自身は「ギターさえ弾けてれば他は何でも幸せなんだよ」って感じの人っぽく、そんな安っぽい企画もまったく意に介する様子はなかったのですが。にしても、正直「静かに聴かせろよ、うるさい企画!」って何度も叫びたくなりましたね。『愛したがゆえに』や『チキリン・デ・バチン』のイントロのナレーションは本気でうざかった。演歌じゃねーんだから!

 まぁ何というか、そんな腐ったステージングはともかくとして、世の中まだまだ凄いギタリストがいるものだと、純粋にそう感じたステージでした。

2 件のコメント:

  1. ファンホドミンゲス凄いギタリストですよね。
    一昨年に行ったアルゼンチンでCDを3枚ほど買ってきました。(1枚600円くらいでした)
    唯一バリオスの大聖堂はあまり上手いとは言い難いですがラウロのベネゼエラワルツは
    最高(NHKのCLASSIC CLUB放送分)でした。

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  2. イオさんいらっしゃいませ。
    ファンホ・ドミンゲスはとにかくもの凄いプレイをもの凄く楽しそうに弾くのが印象的でした。
    あれだけ難しいことやってるとよくも悪くも求道者的な重みが出てくるものですが、
    彼の場合はその重みがまったくなくて純粋に演奏を楽しんでいる感じがしたのです。
    CDはピアソラのしか持っていないのですが、
    彼は大聖堂とかも弾いたりするのですね。
    ピアソラは彼のプレイスタイルにはまっていたけど、
    大聖堂とかベネズエラワルツとかを彼が弾くとどうなるのか、興味津々です。
    アコンキーハとかはなんとなく似合いそうですけども(?)。

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