さて、『祈祷と舞踏』を聴き終わり、次は『スペイン風3つの小品』を聴こうとリモコンを手にした。最初の『ファンダンゴ』の7曲目のボタンを押そうとした時、流れてきた音に手が止まった。先程までの何かに追い立てられ、駆り立てられているような焦燥感、緊張感から打って変わって、温かく、ゆったりと、牧歌的に流れてくるシンプルな旋律。このCDの最後の曲であり、アルバムのタイトルでもある『パストラル』だ。最初の1フレーズを聴いて、「ああ、いい曲だな」と思った。そして次に、そう思った自分に驚いた。これまでは、この曲は特別"いい曲"という認識は持っていなかったのだ。当然、何度も何度も聴いていたはずなのに。
「鬼気迫る緊張感のある曲が聴きたい」と始まったCDの、ふっと緊張の解けた柔らかい音の流れの中で手が止まる。こんなはずじゃなかったんだけどな、と思いながら、曲を変えようとしていたリモコンを置いて耳を澄ます。やはり、いい曲だった。それを確かめるように、続けて3回、同じ曲を聴いた。何故今まで気付かなかったんだろうか。それとも、やっとこの曲のよさに気付けるようになったんだろうか。何にせよ、大好きなこのアルバムを聴く楽しみが、またこれで1つ増えたことになる。
自分で弾いてみたいなと思ったけれど、まずは譜面を持っていない。あったとしても、ゆったりのんびりした主旋律とは裏腹に、ベースはかなり容赦なく細かい動きをする曲なので、聴いている印象より遥かに弾くのは難しそうだけど・・・。
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