2003年1月25日土曜日

2つの衝撃

 今日は、2つの衝撃と出会えました。一つは大萩康司氏の新譜『Bleu』、もう一つは貫井徳朗氏の小説『慟哭』です。

 まずは『Bleu』の方から。私がこのCDの曲目を見て、まず「おっ」と思ったのはモンポウの『コンポステラ組曲』です。この美しくも儚く、そしてあやしい(結局それかい!?)名曲を、大萩氏がどのように聴かせてくれるのかは実に興味津々です。確か去年アルティで大萩氏がコンサートをやったときもプログラムに『コンポステラ組曲』があるのを見つけ、これを聴くためだけでも行く価値あるななどと思いつつ、ところがどっこい仕事が忙しくて行けなくて悔しい思いをしたりもしたものでした。それがCDになって出てくるんですからそりゃ期待もします。・・・思わず譜面を引っ張り出して突き合わせながら聴いてしまいました(爆)。なんでいちいちそんなマニアックな譜面持ってんだなんてのは言いっこなしです(まぁ、今更私にそんなことを言う人間もいないでしょうが)。・・・で、肝心の感想の方ですが、やはり彼らしい美しい音色を基調とした、時に大胆なまでの表現力は健在で、『コンポステラ組曲』はもちろんのこと、一枚を通して実に楽しませてもらいました。とりあえず1曲目、ドメニコーニの『Toccata "in blue"』の入りは「おおう、いきなりそれかい!?」とちょっとビックリしてしまいましたが(笑)。しかしまた『Cielo』に続いて、派手好みな現代曲マニアが喜びそうな曲を・・・。『ヴィラ=ロボス讃歌』と並んで、これから譜面が売れるんじゃないですかね?う~ん、でも『リブラ・ソナチネ』や『コユンババ』みたいのを好んで弾く辺りとは微妙に志向が違うかなぁ?なんか、その路線とブローウェル路線の中間のような、そんな感じの曲ですね、2曲とも。というか、むしろ全体的に。そんな中でラベルの『亡き王女のためのパバーヌ』やサティの『グノシェンヌ』のようなピアノ小品が綺麗なアクセントとなっていい味を出してました。大萩氏、今回も豊かな表現力で曲を活かしたいい演奏を聴かせてくれます。繊細さも激情も、自在に操ってみせる彼の圧倒的な音楽センスには脱帽です。"洗練"という言葉すら早くも感じさせられました。今日本人ギタリストで私が一番好きなギタリストです(藤井敬吾先生は別格)。

 そしてもう1つの衝撃『慟哭』です。これはいわゆるサスペンス・ミステリー系の小説で、随分前(何年単位で)に話題になっていたような記憶があるのですが、ふと今日書店で文庫本を見つけて、なんとなく買って読んでみました。しかしあれは凄いです。ここ数年の間に読んだサスペンス・ミステリー系の小説の中で私の記憶に残っているのと言えば『黒い家』ですが、衝撃度という点ではこちらの方が遥かに上です。『黒い家』が話の緊張感の出し方や盛り上げ方が非常にうまくて面白かったのに対し、『慟哭』は本当に純然たる衝撃です。あのラストは本当にここ数年来の衝撃でした。まぁ、サスペンス・ミステリー系の小説の種明かしをすること程不粋なことはないので内容まで詳しくは触れませんが、この手の小説が好きな人は是非読んでみてください。あのラストには絶対震えます。しかも、私自身文章を書くとあって、本当にあのラストに当たっては「マジか!? ちょっと待て!!!」と震えたと同時に、「反則だろ、でもこれは・・・」とか思わず苦笑いまで浮かべたくなりました。文章を自分で書くような人にも是非お薦めしたい一冊です。ただし、この本は読むに当たっていくつかの注意点があります。

 1. 最初に解説から読むような不粋な真似は絶対しないこと

 2. 読み始めたらできるだけ短期間(数日以内)に読み切ること

 3. 絶対に最後まで読み切ること

 上記の注意点さえ守れば、この本を読み終えた時には確実に私が感じたような"ありえない"衝撃に打ちのめされることでしょう。この本はかなりお薦めです。ただし、確か別の著者が同名の本を出していたような気もするので、買う際は間違えないように注意しましょう。

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