2006年11月24日金曜日

PORT ELLEN - ポートエレン17年 プロヴナンス

PROVENANCE ポートエレン17年
Distillery : PORT ELLEN

Years : distilled in 1982-Winter and bottled in 2000-Winter, aged 17 years

Area : Islay

Bottler : PROVENANCE

Cask Type : Unknown

Product : 43% vol, 700ml

Price : 7,000yen

Remarks : -


 1983年に閉鎖され、もう今後は残っているストック分しか出てこない蒸留所、ポートエレン。「最も閉鎖されるべきではなかった蒸留所」という声も多く、その美しい名前の響きと味わいを惜しむ愛好者は多くいます。今回私が手にしたのは1949年操業の老舗ボトラー、ダグラス・マックギボン社がノンチルフィルター&ノンカラーリングで瓶詰めしているブランド『プロヴナンス』の17年もの。このプロヴナンスは他にも19年、22年、23年、25年、そして23年と25年のジョン・ミルロイコレクションと、執拗なまでにポートエレンをリリースしています。何でも創業者のダグラス・マックギボン氏が最も愛した蒸留所がこのポートエレンだったとか。・・・にしても1ボトラーとしてはストック持ちすぎな気もしますが。また、このプロヴナンスというブランドは蒸留された季節によってラベルの色を使い分けることでも有名。春は緑、夏は赤、秋は黄、冬は青です。今回のポートエレンは瓶にも冬の蒸留と書いてあるので、青いラベルとなっています。

 グラスに注いだ瞬間に、濃い潮の香りに、熟成に使用された樽は公表されていませんが、まぁ濃厚なアンバーの色合いからしても明らかにシェリー樽でしょう、ある程度以上のシェリー樽熟成を経たモルト特有の生醤油のような、しかしマッカランのような甘みはあまり感じない、濃厚ながらもドライな印象を持つ独特の香りが広がります。華やかというのとは違う、重厚でいて、それでいて奇抜な個性も持ち合わせた、落ち着いたアイラモルトの香り。強烈にピートが炊かれたアイラ特有の"正露丸のような"と形容される薬くささが、ラフロイグほどきつくはないにせよしっかりと存在しています。口に含むと、すぐにその香りが口の中一杯に、そして鼻孔の中まで満ちあふれて、まろやかな角のないしょっぱさと、それでいて輪郭がぼやけない枠のしっかりしたシャープな味わいが広がります。そして後口にほんのわずかな麦の甘みと、それ以上の強烈な香りとしょっぱさを残しながら、長く、長く印象を残してなかなか消えていきません。そのどっしりと落ち着きながらも強烈な個性をもった香りと、潮っぽさを常に口の中に感じさせながら最後にほんのわずかな甘みが顔をのぞかせる味わいは、PORT ELLENという優雅で美しい名前に似合わず、そう、まるで晩年のヘミングウェイのような老人が上品で暗いバーのカウンターで一人どっしりとかまえて飲むような、そんなモルトのように思えます。将来、このモルトが飲めなくなるのは確かに惜しい。重厚な個性が素晴らしいモルトです。

 余談ではありますが、このポートエレン蒸留所が閉鎖された1983年はモルトにとって大災厄の年。このポートエレンの他にもバンフ、グレンアルビン他いくつもの蒸留所が閉鎖されています。80年代はモルト大不況の時代で、倒産したり生産の縮小を余儀なくされる蒸留所がたくさんありました。以前紹介したローズバンクが閉鎖されたのは1993年ですが・・・。その後のモルトブームまで生き残ることができなかった蒸留所達。このポートエレンやローズバンクは、確かに閉鎖されるべきではなかった。まったく性格は違いますが、どちらも実においしい、素晴らしいモルトを作ってくれています。これほどのモルトを作る蒸留所が閉鎖に追い込まれる。どの世界でもそうですが、いいものが常に生き残るとは限らない。このモルトを飲んでいると、色々とそんな世界の理不尽さにまで考えがいってしまいます。


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