2007年6月16日土曜日

Bowmore - ボウモア15年 ハートブラザーズ






Hart Brothers ボウモア15年

Distillery : Bowmore

Years : distilled in May 1989 and bottled in July 2004, aged 15 years

Area : Islay

Bottler : Hart Brothres

Cask Type : Unknown

Product : 46% vol, 700ml

Price : -

Remarks : -


 突然だが、ボウモアには結構当たり外れがある。少なくとも、私はそう思う。おいしいボウモアはとてもおいしいが、どうも香りに妙なひねりが強すぎたりして、ちょっと首をひねりたくなるボウモアもある。それは気分や日によって違う(気温の違いのせい?)微妙な香りの立ち方でも変わってくるのだが、意外にオフィシャルのボウモアには外れが多い気がする。逆に言うと、当たりはボトラーズものに多い。このハートブラザーズのボウモアは、そんなおいしい当たりの一つだ。

 色は明るい黄金色。だが、どうもボウモアは全般的にそのような気がするのだが、何だか少しばかり色は暗く淀んでいる。密かに陰を背負った明るい黄金色だ。ほんの少し、微妙に濁っているのだ。言葉では表しにくい。そして香りはボウモアらしく落ち着いている。もちろんアイラモルトなのでアイラらしいピートの香りはする。だが、長熟のボウモアにあるようなしっとりとした落ち着きが感じられる香りだ。ムッと広がる強烈なアイラの薬臭さではなく、グラスの底でゆったりとたゆたう穏やかな海の香り。華やかではないし、刺激的でもないが、適度にしっとりと落ち着いた潮と煙と薬品の香り。実にいい。口に含むとボウモアとしては珍しくまず麦の甘みが前面に出てくる。だから初めて飲んだ時はボウモアのくせに妙に甘いモルトだと思った。そして一口目の口当たりはアイラらしくないマイルドさも感じられる。ところが喉を通るとその第一印象がスッと消えて行き、今度はピリピリとしたスパイシーな後味が長く口の中に残り、甘みが消えて行くのに反比例してモルト侍が「ダシ」と形容している旨味が浮かび上がってくる。その味わいの移り変わりが非常に心地よく、じっくりと飲みたくなるモルトだ。シェリー樽で余計な味や香りがついていない分、ボウモア自身の持つ良さが非常によくわかるボトリングだと思う。

 私が家で飲むアイラとしてボウモアを好むのは、決して押し付けがましくないがかといって弱々しくもなく、落ち着きと刺激、甘みと旨味のバランスが絶妙に取れているからだ。バーではよくアードベッグも頼むが、家ではあれはちと辛い。ラフロイグも家で飲むならオフィシャルなら15年くらいこなれてきてないとやはり辛い。ボウモアか、意外にブルイックラディ辺りが結構いける。このボウモアはそんな私のストライクゾーンのど真ん中に入った、非常にバランスのいいモルトだ。落ち着いた刺激を伴う香り、甘みから旨味へと遷移する味わい、どちらも素晴らしい。ピアソラなんかを聴きながら、少しかすれた辛酸のような、それでいてどこか優しさも感じられるこのアイラを楽しむのがいい。

 最後になったが、今回のボトラーのハートブラザーズは1988年操業。元ホワイト&マッカイのブレンダーであったアリステア・ハートとドナルド・ハートが兄弟で運営している。


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