2000年12月16日土曜日

日独文化交流-音楽を通じて

 昨日は卒論もヤバいというのに何故か関西ドイツ文化交流センターに行って先日クラギタに来襲したプロイショフさん他『ユーゲント・ムジツィールト2000ベルリン』各部門で受賞された方々の演奏会を聴いてきました。しかしあそこのホールはいいホールです。キャパはおそらく100人前後といったところでしょうが、音響効果がとてもしっかりしていて実に音が綺麗に響く。あそこでも一回弾いてみたいなと思いましたね。

 で、演奏の方ですが、プロイショフさんはトップに出てきてバッハの『リュート組曲第1番』の中から何曲か、そして先日我々の前でも弾いてくれたヴィラ=ロボスの『プレリュード第2番』、最後にクレンジャンスの『最後の日の夜明けに』を弾いてくれました。あそこのホールは異常に音が響くというのは演奏前からわかっていましたが、それにしてもまず彼女が出した1音目でやられましたね。音が無茶苦茶太くて艶があり、綺麗な上にデカイ。これがホールやギターのせいだけではないのはこの前研心館で私のギターを弾いた時に証明済み。凄かったです。音色は言葉にし難いのが口惜しいくらい素晴らしい音で弾いてました。そして『最後の日の夜明けに』は現代ギター社のウィンターセールのカタログが来た時から曲名がやけに気になっていて、試みにCDか譜面を買おうかどうしようか迷っていたのですが、ここで聴けたのはよかったです。この曲は『アッシャー・ワルツ』がエドガー・アラン・ポーの小説『アッシャ-家の崩壊』をモチーフとしているように誰かの(口頭で説明してたのですが名前を失念しました)小説がモチーフとなっていて、明日刑が執行される死刑囚が、最後の日の夜明けを待つという情景を描写した実に生々しい曲です。様々な特殊技法を用いて執行官がドアの前まで歩み寄ってくる足音やドアが開けられる音を音画的に表現し、美しくも実は『舞踏礼讃』に頻出するものと同じスケールを差し挟んだあやしい第2楽章へと流れ、最後にはギロチンで首を切られる様まで音で描き出すという凄まじい曲でした。あの曲には惚れましたね。収録されているアウセルのCD(この曲はアウセルに献呈されたもの)と譜面を注文する決意を固めました。素晴らしかったです。

 そして残りの2組はそれぞれピアノとホルンのデュオ、ピアノとバイオリンのデュオだったわけですが、プロイショフさんの次に出てきたピアノの人を見て「ああ、ゲルマン系だからって皆いかついってわけでもないんだな」と思いました(爆)。無茶苦茶細身の人で、眼鏡をかけた良家のお嬢様くさい人でしたね。この人演奏ももちろん凄いのですが、それ以上に驚いたのが譜めくり。速いパッセージが続く曲の中でも、その音符の一瞬の間隙をぬってビッ!と物凄い速さで正確に譜面をめくるのです。あれにはビックリしました。弾きながら一瞬でしかもあんなに正確に間違わずに譜面をめくれるものなのかと(笑)。やはり本場はその辺からして違うのかと思いきや、最後に出てきたピアノの人はちゃんと譜めくりの人がついてました。やはりあれはあの人の特技なのですね。ちょっとホッとしました。

 しかしトリで出てきたバイオリンとピアノのデュオ、最後にベートーベンの『バイオリンソナタ ニ長調 op.12-1』をやったのですが、あのベートーベンは凄かった。マジで最初のつかみからゾクッとしました。ベートーベンは大体において最初の出だしでキメてきますからねぇ・・・。しかしあの曲は同じデュオがやった他の曲と比べても明らかに完成度が違ってました。ピアノやバイオリンは専門外なので詳しくはわかりませんが、とにかく感動しましたね。

 しかしこのコンサート、私を含めクラギタが4人行った以外は身内と思われる客ばかりで、100人前後のキャパがある素晴らしいホールも席はガラガラ。まぁその分音は響きますし、半貸し切り状態なので気分はよかったのですが、しかしもったいない気がしますね。あれだけの演奏を・・・。しかも1,000円で聴けるのに(立命クラギタは)。今回は女性ばかり5人、15才から20才までという若手ばかりでまだ無名の演奏家ばかりでしたが、地方大会で12,000人集まるという『ユーゲント・ムジツィールト2000ベルリン』で各部門の頂点に立った演奏家です。しかもクラシックの本場ドイツのコンクールですよ。冷静に考えてみてください。国内のコンクールでプロのための登竜門と言われる九州ギターコンクールだって、あるいは東京国際だって12,000人は集まりません。それほど大規模なコンクールを本場ドイツで勝ち抜いてきた方々です。ギターのみならずピアノやバイオリンその他も私はプロの演奏を色々生で見てきましたが、ハッキリ言って下手なプロより彼女らはよほど素晴らしい演奏をしてました。そらその楽器の専門家に言わせれば色々あるのでしょうが(私もギターにはちょっと微妙にですが思うところはありましたし)、少なくとも一聴衆としてあそこまで感動したのは久しぶりでした。皆来たらよかったのに・・・。

 どうでもいいことですが、休憩時間にトイレに向かった私は、席に帰る途中演奏終了後のプロイショフさんと遭遇、いきなり話しかけられ戸惑ってしまいました(苦笑)。最初ドイツ語だったし・・・。「Thank you for your kindness」と微笑む彼女と握手を交わし、帰り際に私も「Thank you for your playing」とイマイチよくわからん英語を投げかけ帰ってきたのでした。やっぱソロ弾くと覚えられるわなぁ・・・。あの時来てた付き添いのお偉いさん達もいちいち声をかけてくださっていたし。日独文化交流も悪くないものだと思いました。向こうさんのレベルにこちらが明らかに追い付いてないのが悔やまれるところですが。何かこの交流は一回限りのものではないという噂も耳にしましたが、これからどういう形で続いていくのでしょう? せっかくの機会、少しでも自分の実になるようにしていきたいものですね。

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