2002年8月26日月曜日

オスカー・ギリア夢の供宴

 昨日のことになりますが、私はオスカー・ギリアのコンサートのために静岡まで出かけていました。『夢の供宴』と題されたこのコンサートは、オスカー・ギリアだけでなく福田進一、鈴木大介、村治佳織、大萩康司、村治奏一が共演し、なおかつエレナ・パパンドレオと加藤政幸までもがゲスト出演という、実にありえない面々でのコンサートなのです。これだけ面子が一気に観れるなんて機会、そうそうあるものではありません。ってゆーかむしろないでしょう。演奏会が始まる前から、期待は否応無しに高まっていました。

 三時間半近くにも及ぶコンサートは、オスカー・ギリアのコンサートというよりは出演者が順番にデュオ・トリオ、あるいはそれ以上でコンビを組んでいくパーティー形式のような内容で、オスカー・ギリアは実は二部の最後に三曲デュオを弾いただけで後は客席で高見の見物と洒落込んでいました。しかも私達の席からすぐ右に3mくらいの客席で(爆)。一部が始まる前からそこに座っていたギリアをオムが見つけ、「あれってオスカー・ギリア?」と聞いてきたのですが、似てるけどまさかそんなはずもなかろうと思っていたのですが。なんと見事にその彼がオスカー・ギリア本人でした(爆)。それはそれでなかなかシュールな話です。

 デュオ以上人数の演奏がほとんどのこのコンサート、おそらくはほとんどがまともに合わせてもいないぶっつけ的なノリだったのでしょう、さすがに息がピタリと合っているという演奏はありませんでしたが、それらの共演の中で各々がしっかりと自分の個性を見せてくれているのは非常に観ていて面白かったです。とりあえずやはりというかなんというか、一番最初に驚かされたのは大萩康司。彼が最初ソロで出てきて『そのあくる日』を弾いた時、その最初の一音の響き方に物凄い衝撃を受けました。これだけの面子が揃っているにも関わらず、彼の音は他の誰よりもクリアに明瞭に、大きな音で響き渡っていたのです。ありえねぇ・・・!!! 一番色気のある音を出していたのはやはり福田進一ですが、大萩康司はそれとも違った透明感のある彼独特の音色が美しく、それが非常に印象的でした。そして一番の功労賞は鈴木大介。村治佳織と組んだデュオ、ロドリーゴの『トナディーリャ』でも、最後に福田進一、鈴木大介、村治佳織、大萩康司、加藤政幸の五人でやったファリャの『はかなき人生』でも、彼は周りが走ろうとするのを必死で抑えてテンポをキープしてくれていました。さすが最近ジャズセッションにはまっているというだけあって、人と合わせる術をよく心得ています。最初出てきた時は写真とのあまりのギャップに「オマエ誰だ!?」と思い、ソロで『イパネマの娘』を弾いたのを聴いてそれまでの「美音がウリの純クラシックギタリスト」というイメージとのあまりのギャップにまたも「オマエ誰だ!?」と思うというある意味一番衝撃的な鈴木大介でしたが、なかなかいい味出してました。ゲストのエレナ・パパンドレオの『タンゴ・アン・スカイ』は見事という他ない圧倒的な迫力で、さすがの実力を見せてくれました。彼女のために作られた『ポルカ・パバンドレオ』を弾いて、短い曲であっという間に唐突に終わり、あっけに取られた観客を見てにやっと笑っていたのも実に印象的でした(笑)。そして注目のオスカー・ギリア。今回は重奏のみ三曲の出演でしたが(客席でずっと具合悪そうに咳込んでグッタリしてたし、体調がよろしくなかったのでしょう)、セゴビア直系の正統派かつ示唆に富んだ音楽表現は色々と参考になるところがありました。ギリアのpは凄く柔らかくて太い音がするのです。セゴビアのそれともまた多少毛色は違いますが、ちょっと似た感じの丸い音でした。できればソロも聴きたかったですねー。第三部はボッケリーニの『ファンダンゴ』やヨークの『スピン』、ファリャの『はかなき人生』とクラギタの面々にも馴染みの深い曲達をこのいかつい面子が次々と演奏し、実力の違いを見せつけられるとともに曲の違った側面を垣間見ることもできた興味深いステージでした。まぁ、やはり即席は即席らしく、やはり息は完全にはあっていなかったのですが(苦笑)。まぁ、いたしかたないことでしょう。

 総じて豪華かつ色々なギタリストの色々な側面が見られる素晴らしいコンサートだったと思います。これで5,000円はお買得でしょう。いい勉強をさせてもらいました。おかげで私のギター熱にも火が着いてしまいました。さ~て、何弾こうかな?とりあえずは『魔笛』を完成させろとの声も聞こえてきそうですが・・・。

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