2002年11月25日月曜日

定演お疲れさまでした

 さてさて、行ってきました衣笠定期演奏会。まずは出演者及びスタッフの皆さん、お疲れさまでした。全体として私達の期待に背くことのないよい演奏会だったと思います。オープニング、おそらくは現在のクラギタの速弾き自慢が集まったのであろう『ガーディアン・エンジェル』には少々肝を冷やされましたが(笑)、続くポピュラーアンサンブルはギターのハーモニーの心地よさを改めて感じさせてくれる演奏で非常によかったと思います。チューニングがステージ上にしては不思議なくらい安定していたのもポイントが高かったです。ポピュラーで一番印象に残ったのは一曲目の『Summer』。原曲は知らないのですが、旋律とそれに絡む周囲の音の作り出す響きが非常に気持ちよく聴けました。しかし現職C技殿の音はアンサンブルの中での存在感がありますね。他の音から一歩抜けて響いてきて、決して主張し過ぎることもなくアンサンブルのランドマークとして全体の芯になってくれています。実にいい仕事をしていました。

 そして続くみんなのうたステージはこれまでにない斬新な試みというか、これまでならポピュラーの枠組みの中に一緒に盛り込まれていただろうステージで、しかも何故かポピュラーの面々が入れ替えなしでそのまま演奏というかつてない構成にちょっとビックリしました。でも個人的にはこのステージ好きでしたね。おそらくはクラギタの唱神、某Tの発案といったところでしょうか。時報に始まる『大きな古時計』は静かに暖かくノスタルジックな空気がいい感じでしたし、『トレロカモミロ』は開演前に曲名がどうしても発音できずにらめっこに笑われたりしましたが(苦笑)、歯切れのいいカスタネットと勇壮な低音が非常に私好みで、演奏もイキがよくて最高でした。そして最後の『赤鬼と青鬼のタンゴ』は始まった瞬間思わず「これはヤバイなぁ~」とつぶやきながら笑ってしまう程ギターにはまっていて怖いぐらいでした。このみんなのうたステージは非常に好きでしたね。一曲一曲が短く、切れがいいのも好印象でした。

 そしてフラメンコ。4曲中前半は4回生、後半が3回生という構成の中、まず出てきた4回生の3人は、それぞれが学生時代での最後の大舞台になるわけで、さすがに曲にも入れ込んでいた形跡が随所に見られて感心しました。曲の難しいところに捕らわれるよりも、曲全体を聴かせることに神経を集中できる辺りはさすが4回生といったところでしょうか。十三にあゆあゆ、聖寺、4年間お疲れさまでした。そしてある意味一番ビックリしたりとりとと雅の『サパテアード』。フラメンコらしからぬ美しいハーモニーを持った曲で、しかもそれを雅の持つ独特のオーラとりとりとのとてもFとは思えない柔らかく暖かな音が見事に調和して実にいい感じに仕上がっていました。細部はまぁ粗いところも見受けられはしたのですが、あの二人の醸すオーラは今回の出演者の中では飛び抜けていましたね。最後トリで出てきたF技は、これまでの誰よりもしっかりした音で貫禄を感じさせる演奏を聴かせてくれ、しっかりFステージを締めてくれました。独重の際は音はしっかりしてるもののスケール等でその音が一音一音孤立し過ぎていてフレーズとしてつながりきっていないような印象を受けた彼ですが、今回はその欠点も克服してきて非常に力強い演奏を聴かせてくれました。きっとあれから凄く頑張ったのでしょう。いえ、彼の場合はギター経験なしで入部してきたのですから、入ってから今まででしょうか。3年間の努力が感じられました。

 Cステージの皮切りは一時期私とたっちーが来年琵琶湖ギターフェスで弾くという噂も流れたファリャの『はかなき人生』。この曲にしては非常にゆったりしたテンポで進んでいましたが、その分丁寧に弾いていたのは好印象でした。ですが、ちょっとばかり曲の部分部分における2人の音量バランスの取り方が苦しかった気がしました。唱神殿の坂本龍一は、相変わらずな選曲と相変わらずな空気がさすがで、「ははは、変わってねーやぁ」とか思って微笑ましい気がしました。4回生による三重奏のピアソラは、プログラムを見た時には「はい?あなた方がピアソラですか?」と思ってしまう程私が彼女らに抱いていたイメージとはかけ離れた選曲でしたが、聴いてみるとなかなかどうして、しっかりと妖しく叙情的なピアソラの空気を見事醸してました。いやいや人は見かけによりませんね(笑)。彼女らは基本的に音がしっかり出てるしテンポに安定感があるので、聴いてる方はハラハラすることなく非常に安心できていいですね。その辺りはさすが4回生です。4年間お疲れさまでした。安心してどこへなりと逃亡してください(笑)。そしてトリのC技殿ですが、見事に緊張してましたね・・・。いや、ポピュラーアンサンブルの時から表情堅いな~とは思っていたのですが、ソロで出てくるとその過剰な緊張が嫌でも伝わってきます。演奏の方もやはりその緊張に呑まれ気味な感があったのは正直否めないところではありますが、やはりC技、しっかりした音と曲を観客に聴かせるセンスは他の出演者と比べても一回り上でした。あそこまでガチガチに緊張してなければなぁ、と思ってしまいますが、まぁそれもまたステージでしょう。舞台の上で何が起こるかなんてその時になるまで誰にもわからないのですから。私が1回生の時、定演のCステージで当時のC技殿と4回生の元C技殿のデュオが本番止まってしまい、最初からやり直すということもありました。私自身3回の時はラテンアンサンブルのソロを思いっきり外したり、4回の時もアランフェスで完全に緊張に呑まれたりしました。それもまたステージです。

 そして最後の大合奏です。キムが編曲したドビュッシーの『メヌエット』と私が編曲した『こうもり序曲』が彼らの手によって一体どのように演奏されるかは、編曲者として当然のことながら実に楽しみでした。とりあえずぎぃ助が2年前の定演で舞台係やってた時と同じ服で指揮台の上に立った時は「オイ、舞台係と同じかよ!?」と心の中でつっこんでみたりしましたが(笑)。さて、『メヌエット』は静かな癒し系の雰囲気がギターにもよく合い、安らかでいい感じでしたね。今のクラギタはトレモロがうまいのでこういう曲でもいい具合に演奏できるのでしょう。ウチらはトレモロ粗かったからなー・・・(苦笑)。そして『こうもり』は、最初の出だしを聴いた時、「オイ、オマエら本気でこのスピードで最後まで行けるんか!?」と心配になるくらい元気のいい飛び出しでした(笑)。さすがに速いスケールは皆さん少々辛そうでしたが、それにしてもあのテンポはコロコロ変わるはスケールは速いはダイナミクスは大きいはと、まるでギターにとっての天敵のようなあの曲を、よくもあそこまで弾きこなしてみせたものです。正直あそこまでテンポを上げて来るとは思ってなかったのでかなりビックリしました。あの無茶な編曲をよくあそこまで・・・。そうとう頑張ったんでしょう。譜面を渡された皆さんが、「マジでこれあのテンポで弾くのかよ!?」と悲鳴を上げながら血の涙を流して練習している様が目に浮かぶようでした。ぎぃ助の指揮者ぶりもなかなかのもので、メリハリのある手つきでタクトを振る姿はクールでカッコよかったですね。振り方に色々変化を付けるきよと比較的オーソドックスな王子の中間くらいの振り方でしょうか。まぁ曲が曲だけに振り方には変化が自然と付いてくるからきよ寄りにはなるのかもしれません。いや、でもぎぃ助のことだから狙ったということも・・・?

 総じて、今回はアンサンブルの質が非常に高かった演奏会だと思います。どのアンサンブルも実に心地よく聴かせてもらいました。技術的なあれこれはまた明日続編の『定演裏批評』で私自身の編曲の反省点も踏まえてお話ししますが、部員の皆さんが一生懸命この定演に向けて頑張ってきたんだなという熱気が伝わってくるいいステージだったと思います。やっぱりね、演奏会ってその熱気が重要だと思うんですよね。どれだけ皆がその演奏会にかけてきたかって、伝わるものだと思うんですよ。それは演奏がうまくいったいかなかったとかと関係なく、ステージのオーラのようなもので。そしてその熱気が聴くものにとってはそれが「いい演奏会だな」と感じる大きな要因になると思うのです。その意味で、非常にいきいきとしたいいステージだったんじゃないかなと思います。出演者の皆さん、改めてお疲れさまでした。

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