1999年1月21日木曜日

沈黙の平行線

二人きり、人気のない空間
そこに言葉もなくただ沈黙だけが流れた
「なんか話そうよ」
その彼女の言葉の後もそれっきり
また遠くの喧噪が虚ろに響くだけの時が始まる
言葉を常に意識する僕は
言葉の嘘を知っていた
あるいはそれは誰もが暗黙のうちに知り得ていること
でもやはり
本当に伝えたいことが“言葉”という形で外に出た時
それも自分で嘘に聞こえる気がして
そのことが嫌で沈黙を選ぶ
悲しいことは
僕らは誰もその“言葉”を介してしか何かを語れないこと
“言葉”がなければ物足りないこと
彼女はやはり確かなものとして“言葉”を求め
僕は確かなものとして“沈黙”を選ぶ
限り無い平行線
伝えようとすればするほど
彼女が求めるのは“言葉”
僕が選ぶのは“沈黙”
今僕が口にする“言葉”が虚偽ではないと
信じることもできないくらい
世界に飾り立てた綺麗な“言葉”は蔓延しているから
やはり僕は沈黙を選ぶ

作成:98/9/18 修正:99/1/21

0 件のコメント:

コメントを投稿